【月例会】
「日本のIT政策・2006年を振り返る~今だから明かす、通信・放送懇談会の裏事情~」

会場の様子
会場の様子

 12月22日、前総務相竹中平蔵氏のブレーンとして活躍した慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構助教授の岸博幸氏を講師に招き、通信・放送懇談会の赤裸々な報告を交え、2006年の日本のIT政策全般を解説いただいた。ディスカッションでは、省庁再編やM&Aなどにも話題が及び、活発な論議が交わされた。

 岸氏の講演から

 6月に報告書をまとめた竹中総務相の「通信・放送の在り方に関する懇談会」では、14回の会議を開催したが、その間、改革の動きを止めようとする様々な妨害があったのは事実だ。自由な発言を促すために外部への情報発信をコントロールしたことや、強い方針を打ち出すために業界関係者抜きのメンバーにするなどの試みも批判の対象となり、通信・放送業界関係者の中に、変化を嫌う意識の遅れがあることを再認識した。同時に、理解はしていてもさまざまなしがらみがあってそう表明できないトップの人がいたのも確かだ。
 半年ほどの短期間で報告書をまとめたため、方向性を打ち出すに留まったが、その成果を骨太の方針に盛り込めたことについては、個人的には及第点だと思う。多くの譲歩をせざるを得なかったとはいえ、政府・与党合意を実現したことで、簡単には無視できない形になったからだ。

岸博幸氏
岸博幸氏
 今年のIT政策全般について言えば、本質的なものが何もなかった。省庁ごとに見ていっても、経済産業省は次世代の情報検索・解析技術を開発する「情報大航海」プロジェクトを進めているが、こういう分野はもはや政府が旗を振る時代ではなく、民間が投資して世界と勝負していくべきだ。IT戦略本部にいたっては、もはや役割を終えてしまったのかと思えるほどだった。しかしまだやるべきことは多い。政府は「アジア・ゲートウェイ構想」を掲げているが、整備すべきは空港などのハードウェアばかりではないはずだ。

 来年に向けた日本の課題は山ほどあるが、ひとつは国際競争力のあるビジネスモデルの創出だろう。どうも日本の企業は国内市場に安住する傾向にある。しかし、確実に人口は減っていく。世界に通用するビジネスモデルをつくり、国内で実験して世界に出て行くような流れを作っていかなくてはならない。競争力といえば、アニメなどのコンテンツがすぐに挙がるが、持ち上げられすぎたために粗製乱造気味で、ハリウッドに安く買い叩かれている印象もある。むしろコンテンツでは、日本各地の伝統文化など、世界でも評価の高いものが豊富に眠っていることに注目し、これを収益を生むコンテンツとして発信していってはどうか。文化は維持・保護するもので、もうけるものではない、という発想があるのかもしれないが、それはコンテンツの死蔵に他ならない。

 この1年、米国ではメディアが大きく動いた。youtubeやSNSなど、ユーザー主導のメディアを企業が積極的にプロモーションに活用するようになり、テレビや新聞といった旧来のメディアがネットの取り込みに多大な投資を行い、生き残りをかけた改革に取り組んでいる。

 それに比べ日本はどうか。世界の潮流に大きく遅れを取っていると言わざるを得ない。だがそれは政策を変えるだけではだめだ。民間の意識が変わらなくては、その差はどんどん開いていく。2007年は正念場になるだろう。


 ディスカッション

 会場からの「日本ではメディアとネットベンチャーのM&Aがあまり活発ではないが、その要因をどう考えるか」という質問に対し、岸氏は「買収したいと思わせる魅力あるベンチャー企業が日本に育っていないという側面もあるのでは」と指摘した。
 また「民による新たなビジネスモデルの確立には、官の規制緩和が前提。一方だけでの改革の実践はあり得ないのではないか」というコメントには、「これからは政策を待っているのではなく、民間のつきあげにより政府を動かすことが必要」と強調。「現段階では、有力な経済団体も含め、民間からの有効な改革の提言はできていない」と厳しい見解を示した。
 また、政府の縦割り行政による悪影響が出ているとの指摘に対しては、「省庁再編は竹中大臣も仕掛けたが上手くいかなかった」とその難しさを述べた。その上で、岸氏自身が民間としての動きやすい立場から、省庁の動きをチェックし、問題点を指摘するような取り組みを立ち上げたい、と明らかにした。


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