【バーチャル新世界研究会】
第1回「セカンドライフは新世界の夢を見るか?」

会場の様子
会場の様子

 このほどデジタルコアでは、リアル社会とネット上の世界とのかかわり方を考える「バーチャル新世界研究会」を発足させ、その第1回会合を5月21日に開催した。テーマは「セカンドライフは新たな世界の夢を見るか?」。日本企業も相次いで参加するなど、注目を集めている仮想世界提供サービス「セカンドライフ」に焦点を当て、その課題と可能性を議論した。ネット上の新サービスを自ら体験してその可能性を検証し、NHK教育テレビ「趣味悠々」の番組講師も務めている佐々木博氏がユーザーの立場から見たセカンドライフ内の最新の状況を披露したのち、NIKKEI NETに「ゲームスクランブル」を連載中のゲームジャーナリスト、新清士氏がセカンドライフ誕生の経緯やビジネス動向について解説した。この研究会の主査はデジタルコア・フェローであり、慶應大学講師の神成淳司氏が務める。会合には神成氏と共著で新刊書「計算不可能性を設計する」を上梓したばかりの首都大学東京教授、宮台真司氏も参加し活発な議論を展開した。

神成淳司氏
神成淳司氏
主査:神成淳司氏の解説から

 セカンドライフは、お金がもうかる、またはゲームの中で政治闘争が勃発しているなど極端な話題も目立つが、もっと冷静かつ客観的な議論が必要だ。そこにはバーチャルなフィールドが、リアルを含めた社会全体の中でどのように発展していくかということに関わる要素が含まれているからだ。

 この研究会では、3つの視点で議論を進めていきたい。第一に、バーチャルな世界が引き起こす、現実の社会情勢とのあつれきをどう認識するか。第二に、今後の技術的な可能性の検証。そして第三に、それら2つをふまえて、リアル・バーチャルを含めて今後の社会をどう設計していくのかを考えていきたい。その中で、企業がどのような製品・サービスを世に送り出していくべきかも見えてくるだろう。


佐々木博氏
佐々木博氏
佐々木氏の講演から

 現在のセカンドライフについて、10年前のインターネット黎明期と同じような議論がなされている。「絵も汚いし、時間がかかるし、何が面白いの?」という人と、「面白いじゃないか」という人の違いはどこにあるのだろうか。それは「何もないこと」に面白さを感じるかどうか、ということだと思う。まるで公園の砂場のように、何もないところで何かをつくって遊ぶ、という感覚。まさにインターネットが登場したときの感覚だ。

 その面白さを分析すると、「コミュニケーション」「ビジネス」「クリエイティブ」の要素に分けられる。コミュニケーションでは「自分はここで何をすればいいのか」というプリミティブな質問ができるのが楽しいし、世界各国の人と異文化コミュニケーションができるのもいい。イベントやライブなどにリアルタイムで参加できるのも魅力だ。

 ビジネスとしては、自分が創ったアバターをカスタマイズするコンテンツ、たとえば洋服やアクセサリーなどを販売するのが一般的だ。ネットショップを開くよりもはるかに簡単に物を売る楽しみが味わえる。取り引きには米ドルと交換可能な「リンデンドル」が用いられる。ほかにも乗り物や、「音」などの環境ツールまで売られている。最もセカンドライフらしいのは「土地」の売買だが、これには現実社会同様悪徳ブローカーも登場していて、油断できない。自分も景観のいい土地を購入したらすぐに周辺にいろいろな建物ができてしまった。今後の発展のためには、現状にマッチしたルール作りが必要だろう。

 今の若い世代は、携帯SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の「モバゲータウン」や女子児童向けのファッションゲーム「ラブ&ベリー」などで、アバターコミュニケーションやアバターを飾るアイテムの購入などを経験しており、セカンドライフも決して特別なものではないのかもしれない。セカンドライフではアイテムの製作をはじめさまざまな創造が可能だが、仮想世界ではどんな失敗も挑戦も許される。そうした仮想世界でクリエイティビティーを認められた人が、現実世界で成功する、というようなことが起きると、仮想世界の位置づけも変わってくるのではないか。

新清士氏
新清士氏
新氏の講演から

 日本から見るとセカンドライフは突然出現したような印象があるかもしれない。しかし米国には、オンラインゲームの元祖とも言えるテキストベースのアドベンチャーゲームMUD(Multi-User Dungeon)の普及や、ゲーム内のオブジェクトをユーザーが作ることを奨励した「シムピープル」のヒット、といった背景があった。そこから得られた「ユーザーに何かを与えることで何かが起きる」という経験則がセカンドライフへとつながっている。ニール・スティーブンソンが1992年に発表したサイバーパンク小説「スノウ・クラッシュ」に登場する3Dの仮想空間「メタバース」が、セカンドライフに影響を与えたとも言われている。

 すでに問題になりつつあるのは、RMT(Real Money Trade、ゲーム内の通貨やアイテムを現実の通貨で売買すること)を容認するかどうかの議論や、ユーザーが著名な映画やアニメなどに似せて作ったコンテンツの著作権問題、性的コンテンツの扱いなど。今後対応が迫られるところだ。ただ、これらに関するマナーや法律は国よって異なる。著作権についての対応もまちまちだ。現在セカンドライフサーバーは米国にしかないが、こうした問題をクリアするルールづくりを進めていくためには、いずれサーバーを分ける必要も出てくるだろう。


ディスカッションから

 セカンドライフによるコミュニケーションが現実のコミュニケーションに与える影響については、すでにアメリカで90年代に活発化した論議であり、チャットゲームを通じてコミュニケーションがつながる現象はいくつも現実に起こっているとの指摘があった。

 議論に参加した社会学者の宮台真司氏は、「今後は多様なバーチャルライフの形が登場し、分化が進んでいくだろう。すべての仮想世界を貫くルールが設定できるか、という議論が起き、政治的なせめぎあいも出てくるかもしれない」と述べた。

 デジタルコアの坪田知己代表幹事は「バーチャルとリアルの世界を比較したり、連携させたりすることで、社会全体が良い方向に向かうようにしたい。今は新しい相乗効果を目指した試行錯誤を続ける時期で、セカンドライフもひとつの試金石になるだろう」と述べ、議論をしめくくった。

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