【地域情報化の現場から】
第24回「今日も発信・元気だよ!」~過疎の村で、高齢者の孤独死を防ぐLモード~

川井村
川井村は、盛岡市の東の北上高地の中にある
 岩手県下閉伊郡川井村。光ファイバーともADSL(非対称デジタル加入者線)とも無縁の過疎の村で、NTT東日本のLモードが、高齢者の「命のホットライン」の役割を担っている。川井村社会福祉協議会と岩手県立大学が連携したこのプロジェクトは過疎地における情報化の意味を問いかけている。

人口密度はたった6人

 岩手県の地図を広げると、盛岡から東へ40キロ、宮古市との間に「川井村」が表示されている。実際に訪れると、東京住まいの人間には信じられない光景が広がる。

 盛岡市の中心市街地を抜けると、周りには田んぼが広がり、JR山田線の線路と閉伊川とが並列している。その国道106号線は、冬の路面凍結で凸凹になったまま。1時間ほど車で走ってトンネルを抜けると川井村だ。山に囲まれた空が広がり、道の駅「区界高原」が迎えてくれる。

 今回の舞台である川井村社会福祉協議会(以下、社協)まではさらに1時間。青紫のリンドウがところどころに咲き、道路沿いの家々の間隔も広がっていく。途中、道路と交差している渓流に沿って、家が点在している。訪れた8月は、穏やかな表情をしている家々だが、寒暖の差が激しく、冬には氷点下22℃を記録するという。

 川井村は、東京23区(621 km2)に匹敵する563.07km2の面積がある。門馬、川井、小国の3村が昭和30年に合併してできた村で、小学校は5校、中学校、高校は1校ずつ。医療機関は1つしかない。

 川井村の人口は、3,497人(2006年7月31日現在)。人口密度は1km2あたり6人。東京23区のそれが13,700人だから、なんと2000分の1以下。さらに、この50年間に人口が3分の1減少した。1354世帯のうち、一人暮らしの高齢者世帯は170世帯。高齢化率は40%を越える。野菜は自給自足。たんぱく質や甘い物は、移動販売車でまとめて買っている。

 そんな川井村で、2003年12月、孤独死を防ぐために、社協と岩手県立大学(以下、県立大)の協働プロジェクトによる実験が始まった。毎朝、一人暮らしの高齢者が、簡易インターネット接続サービスであるNTT東日本の「Lモード電話機」を使って、「元気だよ」と発信する。その名も「今日も発信・元気だよ!」。このシステムが高齢者を見守っている。しかしそこには、高齢者に安心感、生きがいを感じてもらうために、この2年半、100%の安否確認を継続するというプロジェクトの努力があった。

「げんき」「すこし元気」「はなしたい」

 現在、39名の一人暮らしの高齢者が、毎朝、Lモードで自分のことを発信している。利用者の平均年齢は、76.4歳。ほとんどが女性だ。Lモード電話機のタッチパネルを触ると、「○○さん、きょうはどうですか?」と、かわいらしい顔の絵と共に「げんき」「すこし元気」「わるい」「はなしたい」という表示が出てくる。その日の自分の調子を確認して、顔の部分をタッチして、発信する。

 その情報は、県立大ソフトウェア情報学部のサーバーに送信される。社協の職員はインターネット経由でこの情報を閲覧する。利用者ID・発信時間・体調が記録された安否確認画面を見て、未発信の人には電話で安否を確認する。電話に応答がない場合には,近くに住む「見守り者」や社協職員が訪問をし、その日のうちに100%確認をしている。また、「すこし元気」「わるい」が発信された場合も、社協職員は電話をし、状態を確認している。

事務総長の大洞さん
事務総長の大洞さん
 ある日曜日、担当、事務局長の大洞敦子さん(62歳)は、未発信の高齢者宅へ電話を入れた。「これから入れるところだった? 畑に行かれたら困るなあと思って。はい、よろしくね」と明るい、凛とした声で話す。もう一人の未発信の高齢者へかけると、どうやらその方は入れたようだった。「いつもちゃんと入れている~さんだからね。機械も暑くて伸びているようでね~。もう一度いれてくれる?」と、相手を気遣う声がけ。この親しい態度が、安否確認サービスが継続している理由かもしれない。


「遠慮文化を打ち破らねば」


 川井村に入っていくと、家と家が遠く離れている。異変が起きても、隣に家がないのだ。だから孤独死が起きやすい環境にある。しかし、原因はそれだけではない。

 「誰にも迷惑をかけたくない」。だから「介護は誰にも頼まない」。

 入院するときも、子や孫に迷惑をかけたくないということで知らせない。他にも、電話をかけられない、我慢強い。市町村から委託されている安全センターにつながる緊急ボタンが押されることは、一年に一度だけ。そんな東北人に多い遠慮深さが、川井村の高齢者にはある。県立大学が開学して以来8年間、川井村をフィールドとして研究を続けてきた社会福祉学部の小川晃子助教授は、このような川井村の文化を「遠慮文化」と呼ぶ。そして、「遠慮文化」や高齢者の社会的孤立がもたらす孤独死をどうにかしなければと、平成15年12月にシステムの運用実験を始めたのだ。

 実験当初からLモード電話機を入れていたが,初めは電話で発話する安否確認だった。朝、高齢者に社協へ電話をかけてもらうのだ。「かけてもらう」ところがポイントだ。確かに、これまでにもITを活用した見守りシステムは、いくつもあった。緊急時に呼び出すペンダント型緊急通報や、センサーで安全を確認する電気ポットなどだ。しかし、前者は携行していないと機能しない、後者は、薪ストーブでお湯を沸すという川井村の地域性にそぐわない。

 「今日も発進・元気だよ!」は、これらのデメリットをカバーしているだけではない。能動的な発信を促すことで、高齢者の方の「してもらうのは悪い」「迷惑をかけたくない」という遠慮感を薄めることができるのだ。

タッチパネルにイラストとひらがな表示

 高齢者が安否を能動的に発信することに慣れてきた2004年9月、実験はタッチパネル操作による電子メール発信へ切り替えた。川井社協での実験の少し前から,高齢者のLモードの活用は北海道富良野社協で行なわれていた。しかし富良野では、青少年やサラリーマン等と高齢者のコミュニケーションの促進が目的となっているため,ボランティアのマッチング機能などがついているが,安否確認は目的ではない。川井村の独特の文化の中で、孤独死を防ぐために、このシステムを活用してもらうためには、いくつもの工夫、協力、そして100%の安否確認が必要だった。

Lモードの画面に表示される「お元気発信画面」
Lモードの画面に表示される「お元気発信画面」
 大洞さんは、Lモードの中でも、高齢者が使いやすいものを選んだ。タッチパネルを取り外して寝室に持っていくことができ、FAXやアラーム、短縮機能がついているタイプだ。それまで普通の黒電話だった川井村の高齢者の方々にとっては、この機能が使えるようになっただけでも、大きな生活の変化だった。さらに、触り心地の良いタイプをと、大洞さんは、実際に全てのLモードを見て、触って選んだという。利用者に少しでも負担を減らして、毎日、楽しく使ってほしいという思いがあったのだ。

 Lモードの1次システムでは、「げんき」「すこしげんき」「わるい」のどれかを押すものだった。このシステムは、ソフトウェア情報学部の学生が開発し、タッチパネルには、顔の絵と文字(ひらがな)の両方が表示される。ひらがな表示なのは、かつての貧しい時代に子守や炭焼きなどの労働に追われ、小学校低学年までしか通学できず,漢字を読めない方がいるという社会福祉学部の調査結果を受けてのことだった。

予定発信が思わぬ効果を生んだ

 2004年12月からの2次システムでは、大洞さんからの日替わりメッセージが加わった。

「8月20日(日)
まだあついのでところ
天がおいしいですね。
ところ天+酢しょうゆ
+からしの組み合わせは、
相性が良い食べ合わせ。」

この大洞さんから毎日送られてくる5行が、高齢者の方の能動的な発信を促すことになった。

「8月21日(月)
つづき…冷たいところ
天は胃を冷やし、体を
温める酢しょうゆをか
らしで中和。冷えすぎを
防止する良い組み合わせ」

大洞さんのコメントには温かさがこもっている
大洞さんのコメントには温かさがこもっている

 と、保健師出身の大洞さんならではのコメントが、高齢者の方々の楽しみを増やしている。振り仮名をふったり、漢字を使いすぎない。でも、少しずつ漢字を使うことで勉強してもらいたいという、大洞さんの優しさと思いやりが篭っている。さらに、この2次システムでは、携帯電話でも安否情報が閲覧できるようになり、社協の職員は、高齢者のお宅を巡回している途中でも確認ができるようになった。

携帯電話の画面で発信状況を閲覧できる
携帯電話の画面で発信状況を閲覧できる
 2005年9月からは、「はなしたい」ボタンが加わって、第3次システムになった。「はなしたい」と発信すると、社協の職員から電話がかかってくる。さらに、事前に予定も発信できるようになった。「よてい」ボタンを押すと、「12月20日の予定は?」、「びょういん」「おでかけ」「デイサービス」とこれも絵と文字のボタンが出てくる。この予定発信により、社協職員が個々の高齢者の行動予定を知ることができるのはもちろんだが、それ以上の効果があった。日付や体調など自分のことを振り返る習慣ができたのだ。

わかりやすいイラストの「予定発信画面」
わかりやすいイラストの「予定発信画面」
 
静かなこの川井村で、一人暮らしをしていると、今日が何日であるかも忘れてしまいそうだ。自分のことさえも振り返ることがなくなってしまうという。

 Lモードのサービスを使っている居舘ヨシノさん(69歳)は、「この毎日の発信があるから、しっかりしなきゃと思える」と一人暮らしを感じさせない、明るく上品な笑顔で話す。自分のことを知る、そして発信する。それが、高齢者の生きがいにもつながっている。

ユーザーの一人、芳門フチエさん
Lモード発信が生きがいになっている
 芳門フチエさん(79歳)は、毎朝、「おはようございます」「今日も元気ですよ」と誰かもう一人いると思って、Lモードに話しかけているそうだ。そんな芳門さんは、L友サロンで出会った友達と、「こうなったらどうしたらいい?」「だめだった?」といいながら、Lモードの使い方を教えあっている。L友サロンは、年に1回、Lモードを使っている高齢者が集まる交流会だ。ここでは、「私は、Lモードでこんなことができる、あんなこともできる」と自慢大会になっているという。また、「あの人がやっているなら、自分もできる」というライバル心も生まれているとか。もともと川井村のコミュニティにあった「結い」が再生されている。

アクティブな社協が信頼の中核に

 第1次システムから第3次システムへと、少しずつ機能が追加してきたが、この少しずつの変化も、高齢者にとっては、大きな変化だった。一つ機能が加わっただけでも、わからなくなってしまう。社協の職員や県立大の教員・学生が、そのたびに足を運び丁寧に説明をし、機械の不具合があれば手直しをし、このシステムを定着させてきた。

ユーザーの話を聞く県立大のメンバー
ユーザーの話を聞く県立大のメンバー
 毎日発信の習慣をつけてもらうためにも、工夫があった。2003年の社会福祉大会で、社協の職員は、「Lモードって何だ?」という寸劇を行なった。台本、監督は大洞さん。Lモードを使うということがどういうことなのかを面白く、わかりやすく演じた。その結果、「NHKの連ドラを見たら、Lモード」というシーンの効果で、連ドラが終わる朝の8時半に、発信が集中するようになった。ただ、効果がありすぎたのか、「連ドラがない日曜日の発信率が低くなってしまった」と大洞さんは苦笑い。


情報拠点になっている川井村社協
情報拠点になっている川井村社協

 地域の福祉推進の中核を担っている社会福祉協議会には、行政委託型と事業型があり、川井村は後者。全ての都道府県、市町村にあるのだが、こんなにも村民に認知されて、信頼関係が築けている例は珍しいはず。
 無医村だった川井村には、大洞さんが県の保健師として着任するまでは、住民基本台帳もなかった。「これでは、住民の健康チェックができない」と、基本台帳を作り、それをもとに、検診基本台帳、成人式の台帳などを大洞さんが作ってきた。その結果、川井村は第1回目の厚生労働大臣賞に選ばれている。さらに、1996年には、保健・医療・福祉の関係者間の連携や専門職の情報共有のために、各施設間をLANで結んだ連絡システム「ゆいとりネットワークシステム」を自主開発している。これは、木村幸博氏(元川井中央診療所所長)がプログラミングし、各関係者がそれぞれの意見を出し、協力して作り上げた。そして、2000年には、緊急台帳を作成し、一人暮らし高齢者に二人の「見守り者」を決めた。これらの台帳は、現在も紙のままファイルに整理されて、社協で活用されている。

このように長年かけて一つ一つ作られた基盤の上に、現在のLモードのサービスが成り立っている。

「安否確認100%」にこだわれば副次効果も

社会福祉学部4年生の村上恵美さんは、調査実習のとき、衝撃の場面に遭遇した。「未発信」の家を訪問したら、男性の高齢者が低血糖で倒れていたのだ。すぐに病院へ運び、命をとりとめた。もし、「確認を怠って『発信』を忘れてしまったのだろう」と軽く考えていたら大変なことになっていたわけだ。社協職員は、「未発信」のまま家を不在にした高齢者を、日暮れまで探し回ることもある。安否確認が100%になるまで、徹底してやる。この人の力の基盤が、システムを活かすために必要なのだ。

システムの効果は、安否確認だけではない。例えば、朝は「げんき」と発信してくれた方が、夕方にめまいがしたときに社協に電話をしてきた。能動的な発信を毎日行なっていることで、社協との距離が近くなり、信頼関係もでき、何かの変化を自己申告する姿勢が育っているのだ。そうした変化で、村の高齢者の医療費が低くなったことが数字に現れている。

発信率の変化、発信時間の変化などから、認知症の症状が出ていることがわかったこともある。毎日100%の安否確認を徹底していなければ、見えてこない現象だ。

社協と県立大学がWIN-WINの関係に

このシステムで川井村の高齢者を支えているのは、社協職員5人と岩手県立大学社会福祉学部とソフトウェア情報学部の先生と学生。県立大学の社会福祉学部側がフィールド調査を行い、そこで把握したニーズをもとに運用などの社会システムを含めてシステム概要を構想する。それを受けて、ソフトウェア情報学部の学生が情報システムを開発し、川井村で実際に使っている。次に社会福祉学部側が利用者の評価を調べて、システムの修正や更新を提案し、ソフトウェア情報学部側が修正や更新を実施する。このPlan・Do・Seeサイクルによって、高齢者や地域のニーズにあったシステムづくりができている。このシステムの構築と運用が認められ、2006年3月、社団法人パーソナルコンピュータユーザ利用技術協会の2006年PCUA全国大会で、優秀研究発表賞を受賞した。

サーバー前に集まった県立大のメンバー
サーバー前に集まった県立大のメンバー
 サーバーを設置し、この開発に取り組んでいるのは、ソフトウェア情報学部の船生豊教授の講座。「プログラミングには、何百万円もかかるが、学生が実践研究を通して開発しているため、コストはゼロに近い。学生は、考えさせられるから力がつく」という。このシステムは、社協と県立大のWIN-WINの関係で成り立っているのだ。

 県立大の授業は、このシステム構築と運用を「素心知困」の精神による実学実践と位置づけている。社会福祉学部の小川助教授は,地域の問題解決を目指し,地域と協働で調査実習を行っている。また,ソフトウェア情報学部では,一人ひとり現場を持ち、素直な心で困っていることが何かを知ることで、現場の地域に通じるシステムを開発する。世の中には、2、3年経つと使えなくなるサービス、商品がたくさんあるが、船生教授は「User oriented approach」を掲げ、使う人の身になってシステムデザインを行なっている。

安心と信頼のつながりを生み出す情報化へ

 県立大と社協のチームは今後のテーマとして、離れて暮らす親族へ、高齢者の安否を電子メールで転送する事業を検討している。Lモードシステムの構想段階から小川ゼミで調査に取り組み、現在、社協の職員を勤めている斎藤建児さん(28歳)は、卒業課題研究でこのシステムが有償でも受け入れられるかどうかを調査した。その結果、親族の68.2%が、有償でも安否情報の転送を望んでいることがわかった。

 安否確認は、平日は社協係長の八木美奈子さん(52歳)が一人で、土日は5人の職員が交代で安否確認を行なっている。別居親族が安否を確認するようになれば,社協職員の負担を減少できるし、別居親族の「見守る気持ち」を大切にできる。

 このシステムの将来にとって悩ましいのが、NTTのLモードサービスが不人気で、近い将来サービスが停止されるかもしれないこと。そこで、Lモードがなくなっても、今同様に、高齢者が発信をできるシステムの開発を検討中だ。

 「今の実験では、高齢者が日常の生活の中で自分を守るための行動が習慣化してきたことが最大の効果と考えています」と大洞さん。
 そして、「こういうことができれば、あとは機器が変ろうとも住民は対応できるのではないでしょうか?」と自信を持っている。

 広大な山間地に散在する高齢者の世帯。光ファイバーは敷設コストが高くていつ引かれるかの見通しがない。ADSLも局舎から遠くて実用にならない。そうしたハンデを背負いながら、川井村のプロジェクトは地域にしっかり根付いている。そこには、地域の大学と福祉関係者の熱い思いと、細かな工夫の積み重ねがある。経済的にサービスが成り立つ都会とは違って、「情報を信頼で裏打ちする」人間関係の強さが印象的だった。

(西田みづ恵=慶應義塾大学総合政策学部4年 )

評価と課題

 岩手県川井村の高齢者見守りネットワークを知ったとき。何よりも驚いたのは、「Lモード」を使っていたことだった。  2001年に、NTT東日本・西日本はインターネットの簡易サービスとしてLモードを開始した。パソコンでは一般の人には敷居が高く、電話機で簡便にインターネットを使えるようにするという狙いがあった。  しかし、結局のところ、高齢者もビジュアルなホームページに魅力を感じ、パソコンでのインターネット利用が定着するにしたがい、Lモードは人気薄のサービスとなり、存続が危ぶまれている。  ところが、川井村ではLモードはベストな選択だった。簡単操作と、ADSL、光ファイバーなどの高速が不要という条件があったからだ。それが過疎の村に残っている高齢者の命を支えているというのは、何とも皮肉な現象だ。

 西田さんのレポートを読むと、このシステムを支えてきた社協の大洞さん、岩手県立大の小川助教授、船生教授らが、心を込めてシステムを育ててきたことが伺われる。大学の地域貢献が要請されている中での手本の一つといえる。
 たぶん、高齢者の方々とのメッセージ、特に声のやりとりが効果を生んでいるのではないか。情報化というと、デジタルのクールな情報のやり取りが主流だ。しかし、パソコン通信の時代に「テキストの通信には三つの情が欠けている。そのことで誤解が生まれ、いい争いが起こる」(元東京都立工科大学の八戸信昭教授)と言われた。「三つの情」とは「声の情」「筆の情」「表情」である。
 Lモードでの発信をトリガーに、音声電話のやり取りがあるというと、都会の感覚だと「人件費の無駄、時代遅れ」と見られがちだ。
 しかし、そこにこそ、人間同士のコミュニケーションの原点があるし、優しさも伝わる。手間もかかり、負担も大きい。大洞さんの愛情が支えになっていることも伺える。

 しかし、このシステムは、もう一度「情報化の原点」を教えてくれる貴重な事例だ。


(坪田知己=日経メディアラボ所長/慶応義塾大学大学院特別研究教授)

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