【経営の可視化とIT研究会】
第4回「経営の可視化とIT研究会」開催

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第4回 経営の可視化とIT研究会の会場

 日経デジタルコアは6月30日、東京・丸の内オアゾにて、第4回目となる「経営の可視化とIT研究会」を開催した。川崎汽船 常務取締役で同社の情報システムを長年率いてきた久保島暁氏が、これまでの経験を踏まえ、経営におけるIT面の課題について考察するとともに、経営科学研究所(MSI)代表の角埜恭央氏が独自の調査結果に基づいたIT経営の分析を行った。

久保島暁氏の講演から

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川崎汽船の久保島氏
 当社では、90年代後半の海運業不況の時代、コスト削減への取り組みの一貫として統合基幹業務(ERP)パッケージソフトの導入に踏み切った。
 このときは、コスト削減が最優先課題だったために、パッケージソフトを一切カスタマイズせずに運用する、という方針を徹底した。現場からの抵抗がなかったわけではないが、トップダウンで推進していった。  IT導入で最も重要なのは、会社あるいは業界の状態や位置づけを見極め、今何をしなくてはならないのか、明確に絞り込むことだと思う。だから業績が好転した今は、パッケージ導入よりも、競争優位に立つための独自のシステムづくりに力を注いでいる。
 CIOが何をすべきか、ということもよく議論の対象になる。しかし肝心なのはCIOという肩書きではなく、そこに求められる機能だ。情報システム部門が「攻めの姿勢」を持ち、他部門あるいは経営陣に対しシステムの利活用やコスト削減を自主的に提言していくように機能することが重要だ。そのためには、経営に積極的に携わっていこうとする姿勢や、技術面だけでなくビジネス面からの発想ができるセンスも必要だろう。

角埜恭央氏の講演から

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経営科学研究所の角埜氏
 企業によっては、ITバブル期に勢いにまかせて導入し、現在、何のためのIT導入だったか分からなくなっている例も少なくない。経営者にとっては「ITにはいくらコストがかかり、いくら儲かるのか」が最大の関心事だが、IT導入後にきちんとした検証を行っている企業は少ないのが実情だ。
 経営科学研究所では2000年、2002年の2回にわたり、「IT経営度調査」を実施した。「トップの意識と行動」「経営とITの連携」「IT構築力」「将来への備え」「IT投資・装備」「IT経営効果」の6つの評価項目を設定し、それぞれに具体的な質問を設けて偏差値を算出。2002年の調査では、三井住友海上火災保険、住商情報システム、キリンビールがトップ3だった。この調査の中で、CIOに期待する役割は、IT機器の管理などからビジネスモデルの策定へ、とより戦略性を帯びたものにシフトしていることも分かった。
 IT経営の課題克服へ向けた一助になれば、と提案しているのが「3C-DRIVE」と呼ぶ概念である。自分たちが置かれている状況を、個別企業(Company)、競合/業界(Competitor)、顧客/社会(Customer)の3つの競争環境レベルに分け、それぞれに方向性(Direction)、準備条件(Readiness)、システム構築(IT)、ビジネス価値(Value Evaluation)の4つの視点で分析していく。それをマトリックスにしてみると、戦略とITの相関を俯瞰することができる。

ディスカッションから

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ディスカッションに臨む久保島氏(左)、角埜氏(右)
 会場からは、ERP導入とその効果に関する質問が多数寄せられた。「ERPをカスタマイズせずに導入したことで予期せぬ効果はあったか」の問いに久保島氏は、「自分たちの正しいと信じていた業務の進め方が、実は『井の中の蛙(かわず)』だったと気づかされた場面も多かった。例えばERPを使いこなすためには、グローバル・スタンダードの会計知識が必須になる。これが結果的に、ビジネスの基礎レベルを底上げした」と述べた。角埜氏は「ERP導入は今後も加速していくはず。ユーザーにとって、パッケージを使うことは痛みを伴うかもしれないが、そうすることでベンダー側には、パッケージでフォローできない機能、付加価値をどう生み出すか、という競争が起きる。そうしてベンダーも鍛えられていくのではないか」と予想した。
 研究会主査である明治学院大学の森田正隆氏が、CIOの人材育成についてたずねたところ「一般論として、センスと分析力があれば、たとえ他業界の出身であってもその会社の弱点をつきとめ、機能していくことはできるはず」と答えた。角埜氏も「日本のIT経営も、もうひといきのところまで来ている、という感覚がある。入社時からパソコンがあった世代がCIOになるような時代が来れば、未来も開けてくるのではないか」と語った。

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