【経営の可視化とIT研究会】
第5回「経営の可視化とIT研究会」開催

会場の様子
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 8月9日、日経デジタルコアでは第5回「経営の可視化とIT研究会」を開催した。今回は企業改革におけるITの活用と効果に焦点を当てて議論を進めた。「企業改革と情報化の効果に関する実証研究」と題したレポートを発表した九州大学大学院経済研究院の篠崎彰彦教授と、実際に企業改革の陣頭指揮を執っている三井物産執行役員CIO・情報戦略企画部長の粟田敏夫が講演し、それを受けて質疑応答や意見交換を行った。

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篠崎彰彦氏

 篠崎氏は、2003年3月に経済産業省が実施した「平成15年度情報処理実態調査」の回答企業のうち、一定の項目で共通回答が得られた3141社のデータをもとに、企業改革と情報化の効果がどのような関係を持つかを検証し、今年6月にレポートをまとめた。

 それによれば、企業改革によって生まれやすい情報化の効果としては、在庫圧縮や作業効率改善といった業務に関する効果、社内の情報活用など職場に関する効果などがあるという。一方、業績の向上、といった効果はなかなか得られない。

 また、従業員の自己啓発や社内研修など人材面での対応や、社内の組織・業務体制の見直しなどが情報化の効果を促していくこと、それに比べ社外と関連した組織・業務体制の見直しは情報化の効果につながりにくいことも分かったという。

 これらの分析から、篠崎氏は日本企業の特徴として、ドラスティックな企業改革においては情報化の効果が出にくいのでは、と分析した。

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粟田敏夫氏

 粟田氏は、三井物産が2001年から進めている大規模な企業改革「業態変革プロジェクト」について紹介した。同社では2000年ごろから、バブル期の清算も終わり、急激なグローバリゼーションが追い風となる中で、攻めに転じようという雰囲気が生まれていた。そのために必要な筋肉質の組織を作るねらいがあったという。

 このプロジェクトでは「全体最適」を重視している。もともとスピードを重視する商社のビジネスでは現場に大きな権限があり、業務手順も各組織ごとにばらばら、という状態
が続いていたという。限られた資源や人員を生かすために、ERPなどのITも活用して、分権・分散一辺倒から分散と集権のバランスをとった企業へと改革を進めている。

 プロジェクト前は社内で450もの業務システムがあり、それぞれが独立していたためにその間を手作業で埋めなければいけなかったというが、現在は統合型データウエアハウス「MICAN」が稼動し、そこで集中的に処理されている。

 ディスカッションでは、「業務プロセスの統制がきつくなると、『偶然の発見』のようなナレッジが生まれにくくなる。そういうものを意識的に生み出すために、ランダムなコミュニケーションの機会をつくる必要があるのでは」という意見が会場から寄せられた。粟田氏は、まだ模索中の事例としながらも「各社員が得意な領域や社内履歴などを公開する電話帳的なシステムがある。ほとんどの社員が登録してくれているが、あまり活用が進んでいないようなので、成功事例を紹介するなどの工夫が必要と考えている」と自社の取り組みを紹介した。また、篠崎氏が進めた調査について「徹底的に数値情報で分析を進めると、可視化どころか今まで見えていたものが逆に見えなくなってしまうのではないか」という指摘に対し、篠崎氏は「事例の検証と、統計的な分析の両方を重ね合わせることが大事なのでは」と述べた。それに関連して明治学院大学の森田正隆経済学部教授は、「経営はアートなのか、サイエンスなのか。それにどうITが関わってくるのか、今後のテーマとしたい」と次回以降の研究会へ問題を提起した。

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