【ネット社会アーキテクチャー研究会】
第5回「ネット社会アーキテクチャー研究会」

会場の様子
会場の様子

 12月19日(火)、ネット社会アーキテクチャー研究会の第5回を開催した。今回のテーマは「ネット社会に求められるプラットフォームとは」。デジタルコアメンバーであり、早稲田大学IT戦略研究所所長を務める根来龍之氏より、プラットフォームというコンセプトをどう捉え、考えていくかについて問題提起がされた。続いて兵庫県で地域SNS「ひょこむ」のシステム開発と運営を手がけるインフォミーム社長の和崎宏氏から、地域活性化を進めるために、SNSをプラットフォームとして活用できるのではないかという視点が提示された。また日立製作所ネットワークソリューション事業部主管である高瀬晶彦氏は、これからのITベンダーにとって重要になる「サービスプラットフォーム」について、その方向性や課題について解説した。ディスカッションでも活発な質問や意見が述べられた。


 根来氏の講演から

根来龍之氏
根来龍之氏

 現在、プラットフォームという概念は多様化し、経営学でも使われているが、大きく分類すれば製品プラットフォーム、取引プラットフォーム、社会プラットフォームの3つに整理できると考える。
自社内で完結せず、他社に補完製品やサービスを依存するプラットフォーム製品事業者には、特有の「プラットフォームリーダーシップ」とも言うべき戦略が求められる。その内容は、自社と、補完製品・サービスの提供者との相互作用を促すインセンティブの仕組み、そして「協働」の質と効率を向上させる仕組みづくりだ。
 プラットフォームの社会性が強まってくると、そのシステムの発展が自社の利益に直接結びつかない、という矛盾も生じてくる。そのジレンマをどうマネジメントするかも課題だ。必ずしも自社を中心とした同心円的ビジネスワールドを作るのではなく、社会プラットフォームの一部に参加していく、という側面も持たざるを得ないのではないか。


 和崎氏の講演から

和崎宏氏
和崎宏氏

 兵庫県で10月に地域SNS「ひょこむ」を立ち上げて、2カ月半たった。その設立背景には震災後、コミュニティーへの支援を目指すさまざまな取り組みが行われたにもかかわらず、地域の問題解決能力はあまり向上していないのでは、という問題意識があった。
 地域活性化とは「地域力」を高めることだ。ソーシャル・キャピタルとも言える地域人脈の可視化、地域の問題解決力の覚醒、地域自治の確立などがそれにあたる。
 SNSは、会員数などが急速な拡大すると、信頼性が揺らぐこともある。しかし地域やある用途に限定した中で運営すれば、最大限の効果を生み出せるのではないか。そこで地域力を高めるためにSNSを利用することになった。
 「ひょこむ」では、実名登録や完全招待制に加え、独自の「後見人制」(招待した人が責任を持つ)などによって信頼性を高めている。ここで目指しているのは地域活性化のさまざまな担い手が幅広く連携できる場をつくることであり、これを私たちは「オープン・ソーシャル・ネットワーク・プラットフォーム(Open SNP)」と呼んでいる。
 現在、地域SNSは全国に200弱あると言われている。これらが理想的な発展を遂げるには、ひとつのSNSがすべてを囲い込んでいくのではなく、それぞれの地域SNSがプラットフォームとして成り立ち、その上で互いのリソースを提供しながら連携していく、という姿勢が必要だ。


 高瀬氏の講演から

高瀬晶彦氏
高瀬晶彦氏

 現在、技術開発の目指す方向性として、サービスの共通機能をネットワークでシェアし、サービスのプラットフォーム化を実現することが注目されている。それは、ITベンダーが「これがプラットフォームです」と披露するような構えたものではなく、ゆるやかな結合によるサービス拡張、というようなイメージだ。
 その実装に際しては、全く別の世界の技術を結び付けてコントロールするようなアプローチが求められる。例えば、携帯電話の端末で、ワンセグ放送と、コンテンツ配信、そして音声通話といった複数のサービスをつなげていくようなものだ。そこではユーザーのプロフィールに確実にアクセスできるメカニズムがプラットフォーム側に必要だ。
 しかし、問題は利益モデルをどう結び付けていくか、というところで、これらのトータルなマーケティングをどうするかが非常に難しい。
 また、プラットフォームは多くの人に使ってもらってこそ価値があるが、そのためにはまず安価に利用できなくてはならない。そのために利益がなかなか上がらないというジレンマが生じる。
重要なのはサービスのどの部分をプラットフォームとして括り、どの部分をモジュラー化して他社に任せるか、という判断だ。
 社会基盤化が進んだプラットフォームでは、プラットフォーム周辺でのイノベーションを加速することにより、補完製品を増やしていくプラットフォームリーダーシップが企業競争力の鍵となる。インターネットをベースにした現在のプラットフォームの課題を認識することで、サービスプラットフォームの方向性が明確になっていく。


 ディスカッション

 プラットフォームは囲い込みの論理ではないかという指摘に対して、根来氏は「プラットフォームとは本来枠をはめることであり、囲い込みだ。そのためにある部分のイノベーションが阻害される可能はあるが、枠にあてはめることで枠の中のイノベーションを加速する。どのようなプラットフォームにも弱点はあり、完全なプラットフォームの独裁は起こらないだろう」と述べた。高瀬氏も「時代にあわなくなったプラットフォーム自体にイノベーションが起こり、遷移していく」との認識を示した。
 和崎氏も、地域プラットフォームによる囲い込みの懸念について「SNSは本来、グループとグループ、それを支えるネットワーク同士の連携に意味がある。それらが強まることで囲い込みを回避できるのではないか」と述べた。技術分野だけでなく社会分野においても、プラットフォームに厚みをもたせることが今後の課題との認識で一致した。


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