【インターネットガバナンス研究会】
第7回「インターネットガバナンス研究会」

会場の様子
会場の様子

3月23日(金)、日経デジタルコアは第7回「インターネットガバナンス研究会」を開催した。昨年アテネで開催された第1回インターネットガバナンスフォーラム(IGF)の模様を、研究会主査である富士通経営執行役の加藤幹之氏が報告した後、同会議に市民社会の立場で参加した会津泉氏がこの会議の成果について分析した。その後のディスカッションでは活発な質疑応答と意見交換を展開した。

 加藤氏の講演から

IGFは、インターネットの管理のあり方などについて議論することを目的とする国際フォーラム。2005年チュニジアでの第2回世界情報社会サミット(WSIS)で設立が提唱され、昨年10月に初めてのIGF総会がアテネで実現した。参加者は、政府、国際機関、企業、市民社会などから約1350名に上った。

「経済発展のためのインターネットガバナンス」という全体テーマのもと、「開放性」、「セキュリティ」、「多様性」、「アクセス」の4つのサブテーマで議論した。10名を超えるパネリストが丁々発止のやりとりをする実験的な形式で、会場からも意見が出るなどインタラクティブな盛り上がりを見せた。またその模様がインターネットで世界中に流された。

インターネットの「開放性」に関するテーマでは、中国の情報統制への批判など政府、国家による規制や、マイクロソフトのような企業が結果的にユーザーの自由を制限する状況を作り出す可能性についての議論が盛り上がった。

加藤幹之氏(左)と会津泉氏(右)
加藤幹之氏(左)と会津泉氏(右)

全体として新しい宣言が出たり、条約ができたりするなどの動きはなかったが、「ダイナミック・コアリション(連携)」の名のもと、政府機関や企業、各種団体など多様な立場の人たちがいくつかのグループを作り、共同で議論し行動していこうという動きが出てきたのは注目に値する。
日本でもこれまで以上に、この議論を広めていくことが重要だ。

 会津氏の講演から

インターネットによって実現された情報社会の主体として、市民社会は無視できない存在だ。中国のように最近まで政府批判の手段がなかった国でも、政府が規制や検閲に乗り出すほどだ。ネットは、権力の中枢から離れている人が声を上げるための、強力で有力な手段となっている。

今回、発展途上国からの参加が少なかったのは残念だ。IGFが意見表明の場であって交渉の場ではないと位置づけ、参加するメリットが少ないと判断したのだろうか。

全体会議のほかにワークショップも開催され、自由で率直な対話の場となった。それぞれが抱えている問題を理解しあうという意味で意義があったと思う。

インターネットガバナンスでは、政府、企業、市民社会をはじめ、すべての利害関係者が参加して議論する「マルチステークホルダー」モデルが不可欠だし、WSISのチュニス宣言でも明記されている。しかし日本ではなかなか浸透しない。それを実現するためには、市民社会の活性化はもちろんだが、それ以上に、産業界の無関心を改善することが課題だろう。相互の連絡体制の整備が進んでいる欧米諸国に比べ、日本が遅れを取っていることを認識しなくてはならない。

 ディスカッションから

慶應義塾大学の土屋大洋助教授から「インターネットガバナンスの問題で、中国政府が比較的強硬な姿勢に出ている。米国への対抗意識、途上国におけるリーダーシップの確保、インターネットが重要なインフラになりつつあること、国際政治のパワーゲーム、政府による情報統制の正当化などの理由が挙げられるが、どう考えるか」と質問が出た。加藤氏は、「それぞれ当たっている部分があると思うが、今後は中国政府がインフラとしての重要性をどう捉えるかという点が、もっとも影響が大きいだろう」と述べた。

日本の産業界がインターネットガバナンス議論に積極的でない要因としては、「直接自社の利益につながらない活動とみなされ、企業トップの理解が得られないことも多い。自社ドメイン名が使用できなくなるなど、危機的状況にでもならない限り、意識改革は難しいのだろうか」との声も上がった。

会津氏は、今後の市民社会の活動について「市民社会だけで何かをしようということではなく、企業や政府など、異なる存在の価値もある程度認め、その上で議論をしてくことが重要だ。従来の知恵では解決できない問題には、市民も参加する責任があると思う」と述べた。

デジタルコアでは5月にIGF事務局長を招いての研究会を予定しており、11月にブラジルで行われる第2回IGFに向け、積極的にこのテーマを盛り上げていくことを確認して議論をしめくくった。

 

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