【月例会】
月例勉強会「グローバルIT企業の競争戦略」

会場の様子
会場の様子

 4月12日、マイクロソフトコーポレーション法務本部シニアバイスプレジデントであるブラッド・スミス氏を招き、「グローバルIT企業の競争戦略」をテーマに月例勉強会を開催した。この数年、大きく変化したマイクロソフトの知財戦略についてスミス氏が紹介した後、Web2.0に対する考え方や将来展望に関する質問・コメントが寄せられた。

 ブラッド・スミス氏の講演から

 グローバルな経済において成長を遂げるには、イノベーションが重要なことは言うまでもない。そしてその重要性は今後ますます高まることだろう。そこでは知的財産権をいかに保護するかが問われてくる。
 ソフトウエア産業では海賊版や違法コピーが幅広く出回っており、われわれも技術によってそれを食い止めようとしてきた。しかしすぐにそれを破壊するような手段が登場してしまう。技術的強化だけでは、不正使用を食い止めることはできないことを学んだ。そこで訴訟など、法的な対応をとることはもちろん、政府レベルに働きかけ、教育などの啓蒙活動をすることで効果を上げている。中国でもこの1年で海賊版減少の進歩が見られた。

 知財の柱は特許だ。マイクロソフトでは、この5年間他社との対話を積極的に進め、クロスライセンス契約の基礎をつくった。日本企業との契約も増えている。
 特許のクロスライセンス契約は各社との技術的な連携につながり、イノベーションが実現しやすくなる。これをグローバルな規模で促進していくためには、政府間の協力も必要になるだろう。国によって特許制度は異なるからだ。
 多くの国で先願主義を採用しているのに対し、米国では先発明主義だ。私たちは米国も先願主義に移行すべきだと議会に働きかけ、議員の支持も広がっている。こうした動きをはじめ、さらに各国の特許制度の調和が進んでいくことを望みたい。最終的には世界的な特許システムの登場を期待している。もっともそうなったとしても各国の制度は残るだろうから、密接な協調はやはり不可欠だ。

ブラッド・スミス氏
ブラッド・スミス氏

 私たちは米国内や欧州で起きた係争を通じ、企業としてより透明性を高めた行動が必要と認識した。その結果として定めたのが「ウィンドウズ・プリンシプル(ウィンドウズの原理原則)」という方針だ。これはメーカーにもユーザーにも「選択肢」を提供することを約束したものである。ほかの企業のソフトからウィンドウズにコミットするような、相互運用性を高める工夫についても言及している。そしてウィンドウズに関する重要な特許について、簡便な方法でライセンス契約を結べるようにもした。ウィンドウズ・プリンシプルには、この10年私たちが得た教訓を反映した。そして今後も、新しい技術や課題に対応できるよう、継続的に検討、公表していく考えだ。

 もうひとつ、オープンな国際標準ということについて述べておきたい。私たちは、オープンソースと商用ソフトを組み合わせて使いたいという利用者のニーズを実現する、新しい提案をすることが重要だと認識している。もっともそれが想像以上に複雑なことだということも近年分かってきたが。
 昨年ノベルとの間で、ノベルが提供するLinuxなど、オープンソースベースのソフトウエアとウィンドウズを連携させるということで合意した。ノベルのソフトを購入したユーザーは、マイクロソフトが特許を持つ技術も利用することができる。これはノベルにとって、ユーザーへの付加価値の提供につながり、マイクロソフトにとっては特許収入につながる。両社にとっても、ユーザーにとっても、効果的な提携だ。

 Open XMLという技術も展開している。これはMSオフィス製品の文書をXMLベースで記述し、オープン性を確保するものだ。その背景には、各国政府からの要請もあった。現在MSオフィスで作成した文書は50年、100年と保存され、場合によっては修整されなくてはならない。しかしそのとき、マイクロソフトという企業が存続している保証はない。そこでこうした技術が必要になるのだ。

 これまで述べてきたことは、マイクロソフトにとって大きな変化だと思われるかもしれない。しかし、これは正しいことなのだ。ITの世界では常に様々な変化が起きている。私たちも認識を新たにしなくてはならない。製品の相互運用性を実現するために、知財の管理やライセンス供与の方法も、開発のアプローチも、標準化団体との協力の仕方も変えてきた。
そして今後、ますます多くの新しい試みにチャレンジする機会を得るだろう。これまで以上に他社や各国との対話を行い、意見に耳を傾けて、さらなる変化を遂げていきたい。

 ディスカッションから

 講演後は会場から、今後のビジネスモデルの焦点やWeb2.0の影響についての質問が寄せられた。スミス氏は、「ソフトウエア中心のビジネスモデルから、ソフトウエア+サービスのモデルとなっていくだろう。ソフトウエアか、サービスか、というようにどちらか一方となるのではなく、両方を共存、発展させていくことが重要だ。Web2.0は創造性の爆発であり、インターネットに関連した開発が劇的に進んでいるという状況を示すものだ。さらに多様化が進み、複数のビジネスモデルが共存していくことになる」と述べた。それに関連し、グーグルのビジネス展開は「広告という単一のビジネスモデルを採用しているように見える」と分析した。また著作権上の課題や、プライバシーの保護、という問題をどう解決していくのかも重要なポイントになるのではないか、と話した。

 また日本経済新聞社の関口和一論説委員が「独占禁止法の解決策として、当局からは常にアンバンドルということを求められる。しかしそれはユーザーのニーズに合致しているのだろうか」と質問したところ、「単純にソフトウエアの追加を是か否かというのではなく、その機能のさせ方に選択肢をもたらす、という方法もある。例えばビスタにはアンチスパイウエアの機能があるが、そのオン・オフはユーザーが選択できるし、他者のアンチスパイウエアソフトを利用することもできるようにした」と答えた。ウィンドウズ ビスタの開発にあたっては、各国政府と2年間にわたり対話を続けてきたことを明かし、アンチスパイウエアについてはEUとのセキュリティ上の議論を通じて得られた解決策だという。

 

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