【ネット時評 : 本荘修二(本荘事務所)】
ポテンシャル高いIT人材、「つなぐ」重要性――「BRIDGE 2009」から

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 『ネットワークが生むイノベーション』をテーマに、IT・コンテンツ分野のベンチャー経営者や新事業関係者318名を集めたイベント「BRIDGE 2009」(http://bridge.weblogs.jp/)が、11月19日、渋谷区立商工会館で開催された。この事業は、世界70カ国で大小様々なイベントが開催される「Global Entrepreneurship Week」の一環として、IBM Venture Capital Group勝屋久氏と多摩大学客員教授の本荘修二(筆者)が企画し、BRIDGE 2009実行委員会(有志や東京商工会議所など)が主催・運営した。イノベーションのハブ役を担うリーダー達や、若い起業家、社内起業家によるパネル、そして技術者ら11組によるプレゼンテーションと展示が行われた。その模様と、話しあった内容についてリポートする。
 

■ツイッターが示すネットワーク化

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 ベストセラー「Twitter社会論」著者の津田大介氏と、ツイッターでのフォロワーが15万人を超えるウノウ社長の山田進太郎氏によるキーノート「ツイッター現象」では、ツイッターでネットワーク化する社会と行動の変化についてフリートークを展開した。「話のネタが増えて飲み会が5倍楽しくなった」「採用応募者にツイッターを見た人が多い」など自身の体験に加え、政党や商品開発プロセスの情報をオープンにするといった先進的な利用にも言及。リスト機能の活用(山田氏)、知らない人を含め100人フォローしてみるとよい(津田氏)などのアドバイスがなされた。


■ネットワーキングとエコシステムづくりの可能性

 「ウェブとエコシステム」パネルでは、カカクコムCOOの安田幹広氏が、同社が運営しITエンジニア約10万人が参加しているQ&Aコミュニティokyuu.comは、質問に答えることでエンジニアが隠れた才能を発揮するため、質問への回答率が93%に上ると述べた。ソシオメディア社長・DESIGN IT!,LLC代表の篠原稔和氏は、ブログメディアのTechCrunch Japanを様々な協力者と一緒に発展させたい考えや、日本発コンテンツの重視を語った。エコシステム(生態系)づくりの新事業に取り組む両名はともに、すぐ儲かるものではないが、やりたいという熱意で踏み切ったそうだ。

 「クリエイターとプロデューサーの輩出」パネルでは、スパイシーソフト社長の山田元康氏が、衰退する少年誌市場や多くのコンテンツが埋もれる漫画業界の危機に際して、個人クリエイターを育て上げるプラットフォームの意義を唱えた。東京コンテンツプロデューサーズラボの菊池尚人所長は、海外コンテンツの企画や、アジアだけでなく欧州への日本コンテンツの展開について語った。

 事業でなく個人として人のネットワークをつくる、出逢いの大学学長の千葉智之氏、Tokyo2.0代表アンドリュー・シャトルワース氏、ジャパンポートLLP代表・J300主宰の東園絵氏によるパネル「人をブリッジするコネクター」では、見返りを期待しない(千葉氏)、尊重と思いやり(東氏)など、人と人をつなぐ秘訣が語られた。


■イノベーションを創る場

 「スペシャル・プレゼンテーション」では、国内で繰り広げられている特徴ある活動をそれぞれのリーダーが自ら紹介した。各界の第一人者が世界中から集まりアイデアを共有するTEDカンファレンスの関連イベント「TEDx Tokyo(http://tedxtokyo.com/ja/blog/)」、プログラミングを愛する猛者たちが作品・技を披露する「天下一カウボーイ大会(http://wccc.onosendai.jp/)」、Webアプリケーションの開発コンテスト「マッシュアップアワード(http://mashupaward.jp/)」、内外のIT企業経営者・幹部が集う招待制イベント「Infinity Ventures Summit(IVS、http://www.infinityventures.com/ivs/event/)」の4つだが、これらを初めて知った参加者は強い関心を示していた。また、異なる活動の間での協力についても言葉が交わされ、別個に動くイノベーションのハブ同士が接点を持つことの意義が示された。

 京都大学情報学研究科同窓会による「あなたの“超交流”をお手伝いします!」セッションでは、同会長で京都大学大学院助教の永原正章氏と同東京支部長で東芝研究開発センターの岡本昌之氏が、周りの一般企業や他大学、ベンチャー、友人など、組織外からの参加を歓迎し、ユーチューブでも公開するオープンな「超交流会」を説明。KLabのCTO仙石浩明氏、はてな執行役員田中慎司氏、楽天の西岡悠平氏、クエステトラ代表執行役今村元一氏らと、その場で同会への参加を呼びかけた。


■起業家精神のいまとこれから

 最も立ち見が多かった「未踏IT人材発掘・育成事業で求める人材とは?」パネルでは、サイボウズ創業者でフレームワークデザイナーの高須賀宣氏が、IPA(情報処理推進機構)未踏IT人材発掘・育成事業(通称:未踏)について、こうした事業は日本にしかなく強い競争力を持つと述べた。会場の未踏関係者からも、衝撃的な出会いがあったと人材発掘の意義が語られた。東京工業大学大学院情報理工学研究科准教授で未踏プロジェクトマネージャーの首藤一幸氏は、グーグル級の事業が日本で生まれるチャンスについて、可能性はあるが環境の問題もあって成功しないことが多く、もったいないと答えた。また高須賀氏は、「情熱と好奇心は最低限の要素だが、情熱しかない人もいる。情熱ある人に才能を植え付けること」、そして「起業は目的ではなく手段だが、逆になっている」と指摘した。

 コアピープル・パートナーズ代表の本間真彦氏が集めた20代の起業家7名(イデアルリンク山本雄貴氏、クリエイティブクラス勝城嗣順氏、コトバンク小泉純氏・谷口諭氏、フォリフ熊谷祐二氏、ポケラボ後藤貴史氏・佐々木俊介氏)が登壇したパネル「起業家として生きる~若手起業家の悩み、楽しみ、想い」は、聴衆の関心を集め満員に。パネリストのほぼ全員が人に言われたことでなく自分でやりたいことをするために起業したが、例えば人集めでは、友人から芋づる式(山本氏)、mixiで仲間集め(後藤氏)と各様の工夫を語った。影響を受けた漫画として4名が「カイジ(福本伸行著)」をあげ、生まれたからには一生懸命戦う(佐々木氏)と刺激されたそうだ。

 大企業の新事業をテーマに、BIGLOBEキャピタルのシニアファンドマネージャー、久保真氏が構成した「コーポレート・ベンチャリング」パネルでは、日立コンサルティングのディレクターである柴田巧一氏は、大企業が独占してきた開発プロセスをだれでもできる時代になったという状況、そしてクラウドに見るチャンスを指摘。インテル事業開発本部デジタルライフスタイル推進部統括部長の江頭靖二氏は、パートナー重視に加え、同社が協賛するファッションイベント「原宿スタイルコレクション」の例をあげて色々なテーマにもオープンな姿勢をとることを強調した。


■若き才能が示す将来の可能性

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 「ショート・プレゼンテーション」では11組が3分で、開発中の技術やサービスなどを披露した。2008年度IPA未踏・未踏ユース スーパークリエーター認定者の5名、山添隆文氏(仮想空間を触れる画像認識技術)、中野恭兵氏(音程補正フィルダbozack)、村田雄一氏(OHP的プレゼンをパソコンで実現するShadowgraph)、米澤朋子氏(音声付箋システムVoiSticky)、西川玲氏(PCでの手書き作図インターフェースPangaea)、そしてIBM東京基礎研究所の川中真耶氏(Accessibility for DHTMLなど視覚障害者サポート)、早稲田インキュベーションセンターから山本圭太氏(携帯スタディ王国)、「音楽のバネ プロジェクト」のPIRAMI氏、IVSの新製品・サービス発表の場であるLaunch Padで準優勝した吉崎航氏(ロボット操作システムV-Sido)、Mashup Awards受賞者の2名、モバツイッターやセミッターの作者えふしん氏、山健太郎氏(アバターが旅するiPhoneアプリTravater)らが、会場を沸かせた。その後の展示でも各ブースに続々と人が訪ね、熱心な質疑応答がされた。


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 BRIDGEはその名の通り「連携」を志向したイベントだ。特に今回は、若き才能とそれを支援する人や組織、さらにコミュニティー同士、そしてリーダー達が連携するきっかけを提供できたといえよう。言い換えれば、つながることで機会や可能性が広がる余地は、まだかなりあることが感じられた。初の開催を成功裏に終えたBRIDGEだが、当日だけ盛り上がるのではなく、今後、関係するコミュニティーの活動促進に貢献していくことを目指している。

<筆者紹介>本荘 修二(ほんじょう しゅうじ)
本荘事務所代表、多摩大学(MBA)客員教授
東京大学工学部卒、ペンシルベニア大学経営学修士、早稲田大学博士(学術:国際経営)。ボストン・コンサルティング・グループ、米国コンピューター・サイエンス・コーポレーション、CSK/セガ・グループ、ジェネラル・アトランティックLLC(IT特化の投資育成会社)などを経て現職。新事業をはじめ経営コンサルティングを手がける。また、広域渋谷圏クリエイターマッチングLLP代表、一柳アソシエイツ・レジスタードパートナー、NetService Ventures Group顧問ほか、企業アドバイザーを務める。著書に「コカ・コーラ パークが挑戦する エコシステム・マーケティング」(ファーストプレス)、「大企業のウェブはなぜつまらないのか」「成長を創造する経営:シスコシステムズ爆発的成長の秘密」(以上ダイヤモンド社)などがある。

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