世界情報通信サミット2006ネット会議
ネット会議トップページへ アンケート ネット会議参加者リスト
-


世界情報通信サミット(GIS) 2006では、毎年恒例のネット会議を1月25日から2月27日まで約5週間開催した。今回のネット会議では、本会議のテーマである「デジタル・ワークモデル」と「IT全般」の2つの会議室で討議を行った。

技術、法律、行政、ビジネスなど様々な背景を持つ情報技術(IT)の専門家、企業人約250人が、国内ばかりでなく海外からも意見を寄せた。「デジタル・ワークモデル」ではテレワークやテレビ会議の同室感が、「IT全般」の会議ではメディア融合や新たなメディアについて議論が盛り上がった。参加者は約250人。発言数は227本。約30万字(単行本3冊分相当)の投稿があった。

全体の司会は日経デジタルコア事務局代表幹事の坪田知己が務めた。

議論の内容をテーマ別に要約して下記に紹介する。カッコ内は発言番号。クリックすると、発言の全文(時系列)ページを参照できる。
世界情報通信サミット トップページ

会議室 A デジタル・ワークモデル

ダイジェスト目次
A) 在宅勤務の利点と問題点 B) サテライトオフィス・リゾートオフィスの過去と現在 C) 団塊の世代の活用
D) 迫真性のあるブレストは可能か E) 情報セキュリティーが壁になっている    


会議室 B IT全般の話題

ダイジェスト目次
A) メディア融合とコンテンツ B) メディアはどのように進化するか C) 劣化する社会の修復
D) ベンチャー企業の倫理とは E) ベンチャーをどう育てるか    


  会議室A デジタル・ワークスタイル 要約A 在宅勤務の利点と問題点

荒野高志氏(インテック・ネットコア)【009】は「今までさまざまな事情で出勤できなかった人がITの支援で働けるようになる」とし、関根千佳氏(ユーディット)【011】も、「シニアや子育て中の女性、障害を持つ人や地域在住者の就労が可能になり、通勤しないでいいのでエネルギー消費も少なくなる」と在宅勤務のメリットを挙げた。

しかし、磯野直樹氏(日本テレコム)【003】は「家でもメールをチェックしたり、仕事を出来るようになるので、逆に仕事がエンドレスになりがち…」との懸念を述べた。

碓井聡子氏(富士通総研)【007】は「1.オーバーワーク(オフィスでの仕事に比べ、より成果・実績評価の側面が強くなるので、心理的に働きすぎてしまう傾向になる)、2.住宅事情による生活と仕事の切り替えの難しさ、3.グループワークが難しい、4.上司が正しく評価できない」--などを日本的問題点として挙げた。

在宅の深夜労働に割増賃金を払うべきか--などの議論があり、前村昌紀氏(フランステレコム)【013】は「労働基準法で、あらゆる職種・勤務形態をカバーするのは無理。たくさん仕事したい人、サボりたい人などいろんな人がいる」と、述べ、多様性をカバーする法改正の必要を述べた。

荒野氏【017】も「大会社とかだと、自己時間管理できない社員がそれを会社のせいにして労基法をたてに労基署に駆け込まれるリスクを考えると、なかなか完全裁量労働制や在宅勤務には、踏み切りにくいと思う」と述べた。

これにSOHO経営者の関根氏【016】は、「社員も納得できる形での成果主義と、上司が、時間では部下を縛らない強い意志が必要。社員の側も、コスト意識や自分なりの時間管理の手法を身につける必要がある」と実践を踏まえた意見を寄せた。

こうした議論のあと、司会の坪田知己(日経デジタルコア代表幹事)【057】が、「労働者は『仕事がおもしろい』『天職だ』と思っている『能動的仕事人』と、『苦痛に耐えるのが仕事だ』と思っている『受動的労働者』と分類できるとして、「(情報伝達コストの破壊的な低下で実現されつつある)自律・分散・協調型の組織は、関係するメンバーの士気の高さがベースになければできない」と「仕事人の質」についてコメントした。

フリーアドレスなど新しい働き方を志向している日本テレコムの現状について、磯野氏【101】は、「『組織』はダッグアウトで、『仕事』はフィールドという概念が前提。所属組織の機能としては、1.業績(パフォーマンス)評価の対象としての組織 、2.(当該業務の)ナレッジを蓄積する場としての組織、3.日々のオペレーションワーク対応をする機能としての組織--が残っている。社員の能力を(新人事制度に照らし合わせ)改めて評価・棚卸しする方向で、報酬への移行・組織配置をしている」などと報告した。

ページのトップへ

  会議室A デジタル・ワークスタイル 要約B サテライトオフィス・リゾートオフィスの過去と現在

片瀬和子氏(未来工学研究所)【023】は、「1990年代半ばに目に見える効果のあったサテライトオフィスも、全社的な組織体制の変革等により、必ずしも現在まで続いていない。街中や移動中でもネットへのアクセス等が容易になり、サテライトオフィスの必要性が低下したのではないか」と述べた。

古矢眞義氏(古矢リサーチグループ)【025】は、「富士ゼロックスの志木サテライトオフィスは職住近接をめざしたが、ネットワーク環境が不十分な上に、勤務者が、何か本社から切り離されてしまったような印象を強く持ってしまい、評価についての不安をもってしまった。しかし、最近、日本IBMが顧客先に近いところに自社専用のサテライトオフィスを設置して活用しており、新たなパターンが生まれつつある」と述べた。

リゾートオフィス論も交わされ、小林一氏(都市再生機構)【062】はエッセイスト玉村豊男氏の「遊びが仕事になり、仕事が遊びになる。リゾートがオフィスになり、オフィスはリゾートになる…」という言葉を紹介、「みなさん遊職人種になれますか? 小生は変身過程です」と述べた。

富沢木実氏(道都大学)【067】は、テレワークについて、「1.自分で仕事をコントロールする意欲、2.管理する側が必ずしも同じ場所で同じ空気を吸って長い残業をすることを評価するのではなく、成果で評価する仕組みを導入 、3.大組織の場合には、特に他部門で働く人との整合性 --などが実現しないとメリットを享受できない」と述べ、和歌山県の白浜で、大企業の保養所をリゾートオフィスに転用する計画が進んでいることを紹介した。

関根千佳氏(ユーディット)【149】は、「私もできればどこか温泉地に本社を移し、税金はそこに収めるけど、営業だけ数名東京に置く、というパターンに早くしたい」と述べ、「日本中の大学が、特に地方大学が、減り続ける18歳人口だけを相手にすることをやめ、18歳から81歳!まで誰もが通える場になればいい」「地方の大学が、都会の大企業に何人送り込んだかを競うのではなく、その地域の知の集積地として機能することを期待する」「日本の全ての世代への、意識改革を含めた『教育』、これがもしかしたら、地域活性化や団塊の世代の生き方、新しいワークスタイルへの、キーワードかもしれません」とまとめた。

ページのトップへ

  会議室A デジタル・ワークスタイル 要約C 団塊の世代の活用

深谷良治氏(NTTレゾナント)【079】が「今後大量退職を迎える団塊の世代の社会貢献や労働意欲を生かすために、ネットを活用できないか」と問いかけたことから議論が盛り上がった。

藤原洋氏(インターネット総合研究所)【086】は、「日本の学校インターネットの問題はシステム管理者がいないということ。IT得意、大好き団塊世代向けの『スクールネット管理者』を法制度化、予算化などできたらと思う」と述べた。

新保豊氏(日本総合研究所)【091】は、「彼らをそう仕向けるような方策(例:単なる経済的なものではない、帰属意識、承認と尊敬、自己実現・完成への念など)が必要」などと述べた。

さらに楠正憲氏(マイクロソフト)【103】は、「非常に優秀であるにも関わらず、或いは優秀であるが故に、努力してもなかなか会社から報われず、それを自分のせいだと責めては悩み、不安を感じている多くの同世代をみて、とても歯がゆい思いがある」「世代間で責任や負債、自分たちの価値観を押しつけ合うのではなく、そろそろ高度成長やバブルの夢から覚めて、持続可能な新しい仕事のカタチ、職業倫理のあり方を考えるべき時期がきているのではないか」と述べた。

ページのトップへ

  会議室A デジタル・ワークスタイル 要約D 迫真性のあるブレストは可能か

遊橋裕康氏(エヌ・ティ・ティ・ドコモ)【008】は、モバイルワークをしている職種は、営業職だけでなく技術・専門職や管理職が多いことを挙げ、「単純な作業の自宅持ち帰りではなく、他者とのコーワーク(協働)をいかに作っていくかが価値創造へのポイント」と指摘した。

村上輝康氏(野村総合研究所)【108】は、「知的サービス企業にとって最大の価値の源泉は、知識と情報を持ったメンバーによる創発的なブレーストーミング。同じ場所に揃うのが難しいので、テレビ会議システムなどを使うが、迫真性のあるブレストは難しい」と技術的な課題に直面していると述べた。

これに、河村明氏(NTTコミュニケーションズ)【109】【122】は、skypeのグループチャットやcampfireというウェブ・チャットシステムを例に、「インフォーマルな、リアル性を持ったコミュニケーションツールがビジネスでも使われ始めている」とレポートした。

テレビ会議の限界もいくつか指摘された。中野潔氏(大阪市立大学)【114】はコミュニケーションを「情報伝達関連側面」「動機伝達関連側面」「動機共有関連側面」に分け、「話し手の動機が伝わり、それが聞き手の動機に影響し、それが呼応することによって場の雰囲気を変えていく」という動機共有関連側面のサポートが弱いことを指摘した。

磯野直樹氏(日本テレコム)【117】は、リアルのブレストでは、「複数の人が同時に発言したり、途中に、となりの人と個別に疑問点を確認したり…等々 いろいろな事ができる(どの方向から誰が発言しているか、という事が同時に把握出来るから?)」と述べ、中野氏【118】も「多数の視線によって、次に発言すべき人が大体わかる」という利点を挙げた。

河村氏【119】はNTTのt-Room、前村昌紀氏(フランステレコム)【121】はフランステレコムのRealmeetという「同室感」を演出するシステムを紹介し、技術開発が進行中とした。

ページのトップへ

  会議室A デジタル・ワークスタイル 要約E 情報セキュリティーが壁になっている

高村俊彦氏(埼玉工業大学)【075】が「テレワークが進まないと感じられる最大の阻害要因はやっぱり情報セキュリティー問題だ」と述べたほか、セキュリティ問題での指摘も相次いだ。

深谷良治氏(NTTレゾナント)【076】は「利便性と安全性と経済性のバランスの問題が更に難しくなってきている。SSL-VPNとかシンクライアントで会社のシステムにアクセスすれば安全であるというが、それを実現するのには結構コストがかかる。そこまで投資して、在宅勤務環境を整えるインセンティブがわく企業がまだまだ少ないことかと思う」と述べた。

これに唐澤豊氏(データメディア)【077】は、「要はトップがやる気があるかないか。セキュリティーは企業内であろうとサテライト・オフィスや家庭であろうと、対策は同じ。企業が導入した仕組みを家庭に延長した場合にセキュリティーが確保できなければ、企業内だって同様に危ない」とした。

関根千佳氏(ユーディット)【115】は「当然セキュリティも確保されていくと思う。弊社のように小さなところでもサーバーやメーリングリストへのアタックはものすごいので、その道の専門家を何人も依頼してセキュリティ管理に努めている」と述べた。

ページのトップへ

  会議室B IT全般の話題 要約A メディア融合とコンテンツ

竹中平蔵総務大臣が「通信と放送のあり方に関する懇談会」を設け、メディア融合への機運が盛り上がっていることを受けて、著作権やコンテンツ産業育成、さらに新しいメディア像などの議論が盛り上がった。

1月下旬、政府の知的財産戦略本部が、ネットでのコンテンツ配信を促進するため、放送局なみに著作権許諾を簡素化する方針を打ち出した。

中野潔氏(大阪市立大学)【010】は「著作権者と著作隣接権者の差を、仮にとっぱらってしまい、有体物の複製によらないで、著作物を公衆に伝達する業の者については、無許諾の複製を許す(ただし、創作的行為により当該著作物の成立に貢献する者に費用は払う)…だと、どんな問題が起きるのだろう…」などと疑問を呈した。

山田肇氏(東洋大学)【022】は、「放送事業が、有線放送や委託放送事業を含めて、著作権について強制実施の特権を享受できるのはなぜか。それは放送には公共性という側面があって、社会に寄与しているからだ。その公共性を担保しているのが、番組編集準則(公序良俗に配慮して放送するという規制)。電気通信役務利用事業者も番組編集準則を守ると宣言すれば、著作権について強制実施の特権を享受できる。そこには免許制は不要」と簡素化に賛成した。

制作側の立場から、中井秀範氏(キャスティ)【016】は事後承諾の形に賛成しながらも「ブロードバンドコンテンツを振興させるために、放送番組をもっと流通させればよいという考え方も、いかにも策のない短絡的な考え方だ。政府は、デジタルCS、デジタルBSに続いて、BBの世界でも地上波キー局支配を続けようと考えているのか? 本気でコンテンツ産業サイドからの発想ができる人を知財なんとかに入れて欲しい」と述べた。

さらに中井秀範氏【031】は、「メジャーな会社でも、金にならないから予算を減らす、予算を減らすからクオリティが下がる、面白くないから客が来ず金にならないという負のスパイラルに落ち込んでいる」として、「私は、大きなビジネスをしている、金銭的に余裕があるものこそ、ネットコンテンツの充実のために頑張るべきだと思う」とネットコンテンツへの投資を呼びかけた。

宿南達志郎氏(慶應義塾大学)【075】は、難視聴解消問題で、「ADSL経由でIP再送信しようとしたら、実験は良いが、本放送は駄目だというのが、ローカル局+キー局の答えだ。放送法で規定されている努力義務を放棄しているのに、他社が再送信をしたいと申し出ると嫌だと拒否している。 免許地域の全ての世帯に番組を配信する努力義務を果たすことが大前提で、民放の全番組が見られない地域には別の手段(IPまたは衛星)で配信する努力を妨げない、ということも次の目標ではないか」と述べた。

村上豊氏(みずほ証券)【084】はNHK民営化問題で、「民放がネット配信をすると即、明日から減収と捉えるのも短絡的な見方。広告の売り方を変えれば将来的に増収に持っていけるかもしれない。NHKも民放と協調あるい競争しながら収益源を多様化することも可能かと思う」と述べた。

宿南氏【085】は「民放が新しいことをやらないのは、今のぬるま湯的ビジネスモデルで十分利益が出るからだ。地方局という流通事業者を生かさず殺さずという状態を維持し、新規参入を妨げる仕組みを維持したいからだ。要するに業界のリストラが必要で、NHKも民放(特に地方局)のスリム化や流通手段のコストダウンをすべきだと思う。そのために、衛星やIPマルチキャストをうまく使って欲しい」と述べた。

村上豊氏【087】【094】は「NHKと民放の世界に冠たる二元体制が続いてしまったため、ハリウッドがそれなりの対抗勢力となっている米国と違い、日本の映画会社やプロダクションは疲弊し切ってしまった。(今回の改革が進めば)放送業界のみならずプロダクション業界、映画業界など周辺業界まで飛び火するような気がする」「融合問題は、ある面、生活者側の技術環境の変化に合わせて、停滞した既往のメディア・コンテンツ事業をビジネスとして再生させてゆくかという意味を持っているのではないか」とまとめた。

ページのトップへ

  会議室B IT全般の話題 要約B メディアはどのように進化するか

藤原洋氏(インターネット総合研究所)【012】は、「よく『携帯』や『インターネット』は、『新聞』や『放送』などと対立するメディアのように取り上げられがちだが、そうではなく、遺伝子を継承した亜種か新種であると思われる。決して過去に登場したメディアが絶滅するのではなく、共存・共栄による全体系の発展が自然法則に則った方向だと思う。『新聞』と『放送』が、『携帯』と『インターネット』を活用して進化していくのか大変興味深い局面を迎えているように思う」と述べた。

新保豊氏(日本総合研究所)【099】も「通信と放送の融合の底流にあるものは、おそらく新媒体(種)の創出とではないか。それは、伝統的な通信や放送ビジネスよりは、一見見劣りするような、しかし多様でオープンな技術群(種)が一定のビジネス環境のもと生き残ることで誕生するとも予見できそうだ」「新媒体誕生の契機を与えるのは、現下の通信会社や放送会社ではなく、異質でかけ離れたところにいる経済主体(企業)が、その役割を担うことが予見される」と述べた。

情報を自動的に取り寄せるRSSリーダーにも注目が集まり、校條諭氏(未来編集研究所)【065】は、「RSSリーダーは、消費者が主体的に情報を得ていくツールとして画期的であると思う。ただし、中間的な役割の人が浮上してくると考えている。それは一種の編集者だ。『自分向けRSSリーダー』を、ターゲットセグメントごとに編集して提供するサービスがさまざま登場してくる」と予想した。

中野潔氏(大阪市立大学)【106】【107】は、「テレワークが質的に飛躍し、ネット上の仮想会議室に世の生業の場の一部が移っていったとする」と仮定し、こうした仮想会議室の知財を有効利用するために、会議のような「『関係』や『会議体』にIDを振る」というアイデアを提示した。

また、藤原氏【109】は「メディアが進化する過程では、『メディア文化』の存在意義が一番重要。新発明の「メディア技術」には新たな「メディア文化」が生まれる可能性がある。この新たな『メディア文化』を健全に育てるために、既に存在するメディア文化から学び、新技術で支えられるところは取り入れて『新たなメディア文化』を育成することが大切」と述べた。

村上豊氏(みずほ証券)【123】は、「日本のアニメの質の高さはピクサーやドリームワークスのいいお手本として真似されているにもかかわらず、日本アニメ業界はグローバルなビジネスで打って出られるビジネスマンもおらず、ビジネスでは勝負になっていない。メディア融合の議論の中でも、こうしたグローバルなプロデューサー育成策がセットで論じられるべきではないか」と指摘した。

ページのトップへ

  会議室B IT全般の話題 要約C 劣化する社会の修復

官製談合、耐震構造偽装などの社会的な問題が続出していることに対し、飯坂譲二氏(ビクトリア大学)【017】【018】は「劣化する社会の修復」と題して、「政治、官僚、企業、教育、個人どれをとっても劣化現象で一杯だ。まず、劣化の原因を究明する必要がある。そして原因を取り除いたり、マイナスの影響を最小化する対策を立てることだ。IT関係で当たり前になっている手法を駆使した政策の立案・議論をしてもらいたいと思う。この意味で官僚のスキルの遅れ、政治家の幼稚化が気になる」などと述べた。

藤原洋氏(インターネット総合研究所)【019】も、「こういう時こそ『基本に帰ること』が重要な気がする。本来の企業の存在意義は、何なのか? 公務員の責務は何なのか? 技術革新の本質を見ずに、技術革新のスピードに追い立てられて、経営者も公務員も本来のミッションを忘れて、スピード違反どころか、法律違反を犯しているようだ」と述べた。

この話題は「格差社会」へと議論が広がり、福冨忠和氏(ジャーナリスト)【038】は、「日本はもともと『階級社会』と呼べるような階層性が隠れた形で持続してきたのではないか。それが、産業構造の変化、経済成長、団塊の世代とそのジュニア--などの存在で見えなかったが、産業の閉塞、成長の鈍化、団塊世代の引退などの事態が進むことで、もともとあった階層性が、一般からも目に見える形で顕在化しつつあるのではないか」と述べた。

中野潔氏氏(大阪市立大学)【041】は、1.産業における知識的業務の貢献度が高くなってきた、2.ルーティンワーク、非知識的業務の外部化が進んだ--という点を挙げ、「ルーティンワーク要員として採用されたが、管理職になれた…などの番狂わせがどんどん少なくなっている…」と指摘した。

社会の修復のために、誰が何をすべきかという問題提起があった。小林隆氏(東海大学)【046】は、「社会が疲弊した理由は、行政の計画や制度の可変性の低さが一因。市民と役人が協働して制度改善を提案できる枠組みを与え、議員が法や条例の改善と討論と判断の能力を高めるために、職能としての専門のスタッフを置くなどの対策が必要」などと述べた。

ページのトップへ

  会議室B IT全般の話題 要約D ベンチャー企業の倫理とは

ライブドアの不正事件で、ベンチャー企業の姿勢が問われている問題で、中野潔氏(大阪市立大学)【043】が「『ニッチ狙い』と、『順法と違法とのぎりぎり塀の上』との違いをどう区別するのか」と問いかけたことに、意見が相次いだ。

藤原洋氏(インターネット総合研究所)【045】は、ベンチャー経営の立場から、「新しい市場は、まだ世の中が取り入れてない技術革新から生まれる」として、「インテル、マイクロソフト、シスコシステムズ、ヤフー、グーグル、アマゾンなどは、技術革新と技術革新の応用ビジネスに正面から取り組んで成功したベンチャーで、決して盲点などついていない」「ルール違反やルールの抜け道を探すことにエネルギーを使うくらいなら、法制度の改定技術的、経済的根拠を提示し、専門家の支持を得て、政府への働きかけに全エネルギーを使うべきだ」などと「正面からの挑戦」を推奨した。

校條諭氏(未来編集研究所)【047】は、「盲点をつくところばかりに目がいく経営者も、いちがいに指弾はできない。しかし、我々やマスコミが、社会性、公共性を重視する『志ある経営者』を称揚することはできるのではないか」と述べた。

白石清氏(Jストリーム)【049】【054】は、「私は真に新しいビジネスは、おそらく法がどうであれ成立するものだと思っている」「日本の得意とする工業の世界では、証券、金融ルールがどうであろうと、必要な商売は生きられる」として、ルール破壊は基本的にNOだとした。

中野氏【062】は、「志も大事なのではないか。ヤマトの創業者の小倉氏が、敵を作りながらも一種すがすがしさを感じさせたのは、そういう点でなかったか」と述べた。

飯坂譲二氏(ビクトリア大学)【122】も「ビジネスモデルを作る上で、それぞれの企業が顧客に対してどのような寄与、サービスをするのがその企業の目的であるか、その理念や考え方や思想の欠如している」と嘆いた。

ページのトップへ

  会議室B IT全般の話題 要約E ベンチャーをどう育てるか

藤原洋氏(インターネット総合研究所)【028】が「GoogleもYahoo!もStanford大学の大学院生が作った。米国の力の源泉の1つは、新たなテクノロジーを産み出す高等教育の現場にあるように思う」「Googleの技術的成功は、より優れた検索アルゴリズムへのこだわりにあったと思う。ビジネスのこだわりは、事業を成功させること。要は、やるべきことをやってやるべきでないことをやらない、という基本が逆転している場合が未だ結構日本で多く見受けられるように思う」と述べた。

こうした意見から、日本では米国のようなベンチャーが育たないことが問題になった。Googleの成功を話題に、日米の企業文化の差が話題になった。

中野潔氏(大阪市立大学)【032】は、日米比較を行い、「日本の産業界への教訓は、天才的な技術力を備えた人物が、ベンチャースピリットを鈍らせないうちに、大きな研究開発資金余力を得、一方で、きちんとした経営をするサポートも受けていけるような、広義の市場の仕組みを整備するべき…ということだ」と日本の課題を述べた。

岸上順一氏(NTTサービスインテグレーション基盤研究所)【036】は、「必然の部分は創業者の圧倒的なリーダーシップがあると思う。それはいまだ日本でまともなITベンチャーの成長が見られないということが大きな要因として挙げられる。検索エンジンはいまやGoo以外はほとんどアメリカ産になった。大企業がアメリカの新興産業と同じような動きをする方法を考えるほうが日本には合っている」と述べた。

藤原氏【042】は、大企業とベンチャーの連携不足の問題で、「大企業の自前主義が最大の要因だと思う。しかし、意外と日本の技術力のあるベンチャーとうまく提携を始めている大企業も登場しており、うまくベンチャーと提携できる大企業が勝ち組みになっていく」と述べた。

富沢木実氏(道都大学)【056】は、「エリクソンやノキアなどは、研究者が仕事の2割を先生として大学で教えるとか、逆に先生が2割を企業のコンサルをするなどしている。学生のインターンシップを受け入れ、また、企業が大学院生の卒論や実験の手伝いもしていた」と、北欧での企業と大学の連携の例を紹介した。

ページのトップへ


-
お問い合わせ:digitalcore@nex.nikkei.co.jp
Copyright 2006 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved. NIKKEI NeT NIKKEI Digital CORE