【インターネットガバナンス研究会】
特別会合「マーカス・クマー国連IGF事務局長を迎えて」

会場の様子
会場の様子

 5月8日、国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)事務局長を務めるマーカス・クマー氏を迎え、第8回インターネットガバナンス研究会を開催した。IGFは米国が強い影響力を持つインターネットの運用体制に対する批判の高まりを受け、2005年11月の第二回世界情報社会サミット(WSIS、チュニス会合)で設立が決まった。各国政府や民間企業、市民社会などが一堂に会して自由に議論することを目的としており、翌2006年にはアテネで第1回総会が開催された。今回はそのIGFの舵取りを担うクマー事務局長に、これまでの経緯や成果、今後の活動などについて講演いただいた。会場からはインターネットガバナンスと企業のかかわりなどについて、質問やコメントが寄せられた。

クマー氏の講演から

 国際協力の活動の中でも、インターネットガバナンスは新しい分野のテーマだ。それを議論するIGFも、国際協力の1つの実験としてとらえられている。監視機能を持った団体ではなく、意思決定機関でもない。新しい概念を持った組織で、多種多様な期待が持たれている。

 2006年10月30日から11月2日まで開催されたIGF第1回アテネ総会では、様々なステークホルダー(利害関係者)が参加した。互いに情報提供する形で議論でき、将来的にも強固な基盤ができたことが成果だと思う。
議題として「オープン性」、「セキュリティー」、「多様性」、「アクセス」という4つの広範なテーマを選択したことも、議論の幅を広げることにつながった。また、メーン会場での会議と並行して設置したワークショップでは、より具体的な行動へ向けて、業種間を超えた積極的連携(ダイナミック・コアリション)が生まれたことも大きな収穫だったと考えている。

マーカス・クマー氏
マーカス・クマー氏

 IGFが意思決定力を持たないことへの批判はあるが、インターネットの公共的な課題についてオープンに、そして結果を意識せずに忌憚なく議論できるミーティングは重要ではないだろうか。長期的に議論を重ねることにより、国際的な整合性を保った、広い視野での議論の場を提供することに意義がある。

 アテネ総会では、すべての関係者が同時に話し合う「マルチステークホルダー」形式の対話を通じ、それぞれWin-Winの関係を作ることができた。将来へ向けての新たな展望も出てきており、国家レベルにおけるベストプラクティスを共有していきたい。2007年11月開催予定のリオデジャネイロ総会の具体的なテーマは検討中だが、多様な立場からの積極的な参加を期待している。

ディスカッションから

 アテネ総会において、企業などプライベートセクターの参加が少なかった点についてどう考えるかとの質問に、クマー氏はPR不足があったことも認めた上で、「プライベートセクターが求めているものと、市民社会などが求めているものに差があるのかもしれない。最初は懐疑的であっても、参加したことでその価値を理解したという感想もある。ガバナンスの議論は脅威ではなく、そこに参加することでチャンスが広がるのだと捉えてほしい」と述べた。

 それを受けて「企業のCEOに関心を持たせ、IGFに参加させるためにはどうしたらいいか」との声が上がると、「IGFではふだん交流できない立場の人とも会えるし、社会と自社とのかかわりについて再認識し、説明する機会にもなる。それを通じ企業イメージを伝えることもできるだろう」とメリットをあげた。インターネットガバナンスの多様性という側面から見ても、トップの人間が自ら話すことの重要性を述べた。

 また第1回アテネ総会に参加し、前回の研究会でレクチャーしたハイパーネットワーク社会研究所の会津泉氏からは、「発展途上国の中には、参加したくても国の援助などがなく、参加できない人も多かった。それについて次回なんらかの手を打つのか。WSISで勝ち得たマルチステークホルダーという発想を真の意味で実現してほしい」と意見を述べた。

 クマー氏は「次回リオデジャネイロで何らかの条約ができる、というようなことは確約できないが、パネルディスカッションのクオリティーをあげる、途上国からも参加しやすいよう支援体制を作るなど、より良い方向に進むよう、可能なことにひとつひとつ取り組んでいきたい」と決意を述べて会を締めくくった。

 

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