【ネット社会アーキテクチャー研究会】
第4回「『IPv6』その課題と可能性」

会場の様子
会場の様子
 10月25日(水)、「ネット社会アーキテクチャー研究会」の第4回勉強会を「『IPv6』の課題と可能性」をテーマに開催した。最初に研究会主査であるインテック・ネットコア社長の荒野高志氏が、IPv6を取り巻く最新の動きを概説した。その後、NTT東日本-神奈川 法人営業部の常川聡氏、松下電工EMIミドルウェア研究所の藤原憲明氏から、実際にIPv6を使ったサービスの展開について紹介があった。質疑応答では、IPv6を今後社会でどう活用していくのか、意見が交わされた。

 荒野氏の解説から

荒野高志氏
荒野高志氏
 現在のインターネットの通信手順であるIPv4は、開発当時の1980年代には予測できないほど利用が拡大した。IPアドレスが枯渇するのは2021年と予測されていたが、中国のインターネットの急成長や米国のブロードバンド普及などが影響し、最新の予測では2011年ごろに早まるとの見方もある。IPv6では使えるIPアドレスが天文学的桁数になり、枯渇の問題は解決できる。

 IPv6への期待はそれだけではない。セキュリティーやマルチキャストなど、機能的な面でも優位性がある。そして、パソコンだけでなく、家電製品をはじめとした様々なものにIPアドレスを割り振ることができるようになるため、これまでデジタル化されていなかった情報がネットワーク上に流れるようになる。重要なのは、情報の量ではなく、そうした質の変化が起きることだ。例えば「今、冷蔵庫にビールが何本入っているか」というような情報がネット上に出てくると、その情報をキャッチしてビールを効率的に販売する、といったビジネスも可能になる。あるいはタクシー会社で、走行している自動車のワイパーがどう作動しているかという情報を集め、気象条件をより決め細やかに把握し、効率的に配車できるようにもなる。ネットを通じて集められる物からの情報を、現実の世界のビジネスにどう生かすか。そのためのイノベーションをいかに起こすかがカギだ。v4からv6への移行によって新しい「情報流通プラットフォーム」を構想できるのではないか。 IPv6はすでに導入可能な状態にある。米国では国防総省が2003年から対応し、2008年に移行を完了する予定だ。日本では総務省がIPv6への移行実証実験を行うなど、国を挙げて推進している。しかしまだいまひとつ普及が進んでいないのは、IPv6の普及自体が目的化してしまったことも一因だろう。今後はマイクロソフトの次期OS Windows VistaにIPv6が標準装備されることもあり、運用を意識せずにはいられなくなるが、新旧の通信手順が混在するとセキュリティー上の問題が起こる危険性もある。


 常川氏の講演から

常川聡氏
常川聡氏
 NTT東日本では、「フレッツ・ドット・ネット」と呼ぶIPv6を利用できるサービスを開始している。これは、NTT東日本の「フレッツ網」上にIPv6で構築したネットワークを使い、写真や動画を簡単にブログ(日記風の簡易型ホームページ)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上に公開したり、高品質のテレビ電話を利用できるというものだ。

 法人向けにもこのネットワークを活用したソリューションを展開しており、病院や福祉施設、流通業などで導入が進んでいる。例えばあるコンビニエンスストアのチェーンではマルチキャスト機能を利用して、数千店舗のIPv6対応端末に情報を配信している。 v6時代における情報流通は「MPMH(マルチプレフィックス+マルチプラットフォーム)基盤モデル」ともいうべきものになると思う。ひとつの拠点内に複数のネットワークが存在し、同時に複数のサービスプロバイダーに接続が可能、ということだ。これが実現すればユーザーにとって非常に便利なネットワーク社会が登場するのではないか。


 藤原氏の講演から

藤原憲明氏
藤原憲明氏
 松下電工では、ビルの管理やマンション、ホームネットワークのシステムにIPv6を導入し、設備管理に利用している。

 1997年に議決された京都議定書で温室効果ガスの排出削減目標が示されたが、現行の対策では達成できる見通しはなく、さらに省エネルギーを進める必要がある。ビル管理の業界も最重要課題のひとつだ。

 そうした中、センサーをビルの中に配置し、空調やブラインドなどをIPv6を使って協調制御するという実験も行っている。v6なら設備のひとつひとつにきめ細かくアドレスを割り付けることができ、より管理がしやすくなる。

 情報家電の分野ではホームセキュリティの「くらし安心ホームシステム」や、離れて住むお年寄りの行動パターンを携帯電話に連絡する「みまもりネット」サービスなどにIPv6を応用している。現状では、これらのシステムは家の側からサーバーにアクセスすることが前提になっているため、外部からの情報アクセスが難しいといった問題がある。そこにIPv6を導入することで、どこから、どんな端末からでも安全にアクセスできるようになる。ユビキタス環境のホームネットワークを各メーカーとも目指しており、今後IPv6化が加速していくことが予想される。


 ディスカッションから

 会場からは「IPv6はすでに導入可能な状況だとのことだが、運用ルールの整備ができていないなどの問題もある」や、「次世代ネットワークが構築され始めている中で、どう共存していくのか」などのコメントがなされた。利用者の利便性を損なわない安心できる認証方法として活用できないか、という提案もあった。荒野氏は「IPv6はようやく実際に使われ始めた状況。インターネットはこれまでも多くの試行錯誤を繰り返して進化してきた。IPv6も同様に、これから具体的に出てくる問題を解決しながら、社会基盤として育てていくべきだろう」と述べた。


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