【ネット時評 : 市川明彦(日立製作所)】
NGNとFMC、IPv6は同時に議論を

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 3月末、NTT東西が次世代ネットワーク(NGN)サービス「フレッツ光ネクスト」を首都圏と大阪の一部でそれぞれ開始した。他の通信キャリアとの接続ルールの問題など、さまざまな議論を呼んできたNGNが、いよいよ実践の段階に入った。
 

ぴんとこないNGNの道筋

 私は以前、2010年から2011年ごろには現行のインターネットに関する諸問題が相当解決されたネットワーク社会が到来するのではと期待していた。しかし、こうしてNGNというものが現実になったにもかかわらず、わが国における本当の「次世代ネットワーク」の道筋や可能性がどこにあるのか、いまひとつぴんとこないのである。

 ユーザーの側から見たNGNのイメージはこうだ。1つの端末で、どこにいても(家の中、街中、車の中、オフィスなど)、無線LANを含む無線あるいは有線の通信サービスを通じ、通信と放送に分かれているサービスを一体的に利用でき、カーナビシステムやホームコントローラー、RFID(無線自動識別)タグの付いた商品などもネットワークにつながっており、希望すれば現行のインターネットより高度なセキュリティ品質も享受できる――。このイメージは、NTTによる説明や、さまざまな研究会の場でもよく描かれている。


実現に必須な「3つのテーマ」

 このイメージを実現するには、(1)現行インターネットとNGN、(2)固定・有線と移動・無線、(3)IPv4とIPv6、の共存及びシームレスな相互接続が必須と思われる。しかも、恐らく同時に実現されなくてはならないと感じている。しかしこれら3テーマは、個別にはよく話題になっているものの、具体的なサービスの中でどうなるのか、十分な議論がなされていないのではないか。

 「通信と放送の融合」というかけ声のもと、コンテンツレイヤー視点のイメージが先行していく一方で、伝送サービスなどインフラレイヤーでの論議は専門家、事業当事者だけのクローズドな論議を重ねているように見える。

 NTT東西によるNGNの説明でも、FMC(固定・携帯の融合)やIPv6にも多少言及しているが、基本的には固定・有線サービスである光ケーブル通信回線をいかに多く使ってもらうか、に終始しているように思える。従来のベストエフォート型に対し、NGNのような一定の通信帯域(速度)を保障するQoS型サービスが、現行のインターネットの問題・課題をどの程度解決してくれるのかも定かではない。帯域確保により、遅延、ゆらぎなどは解消されるようだが……。NTTはドミナント(支配的)として各種制約を受けており、携帯電話や無線LANと一体となった融合サービス、ビジネスは難しいのかもしれないが、既存の設備投資活用にこだわっていると、他の通信キャリアにいずれ融合サービスで遅れをとる可能性もある。


最悪のシナリオを脱するために

 この3つのテーマをバラバラに論議し、勝手な実現工程を立てると、結局そのどれかが足を引っ張って、冒頭に揚げたようなイメージの実現が遅れてしまう。そうなると、せっかくのNGNも部分的、限定的なサービスにとどまって魅力が薄れ、サービスの普及が遅れるといった負のスパイラルに陥る事になりはしないか。一方、これらが有機的、同時的に解決されれば、利便性の相乗効果でマーケットは広がるであろう。

 そうでなければ、先進的なコンセプトと、法制度整備を含むネットワークインフラ整備、その活用の実績とそこから得られるノウハウを背景に、日本の国際競争力を強化するというシナリオも成立せず、絵に描いた餅に終わりかねない。
 
 特にIPv4/IPv6問題は、日本の取り組みが進んでいると言っても、事はグローバルレベルの課題であり、そう簡単ではないのかもしれない。まず、わが国が率先して「全部をまとめて議論」をすべきではないかと思う。できるところからやっていく、というのもは良い方法だが、順序を間違うとステップが進んでも相乗効果が期待できない。通信と放送の融合も足元をすくわれてしまう恐れがある。

<筆者紹介>市川 明彦(いちかわ あきひこ)
日立製作所 公共システム事業部 情報保全管理センタ 副センタ長
日立製作所 情報通信事業グループにて電子商取引ビジネス推進を担当し、現在は公共システム事業部で電子政府などを含む海外の公的部門へのソリューションビジネス展開を担当。流通経済大学講師、日本経団連ITガバナンスWG委員などを歴任。公認システム監査人、公認情報セキュリティ監査人。著書に「インターネットコマース新動向と技術」(2000年2月、共立出版)がある。

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