【ネット時評 : 関啓一郎(内閣官房情報セキュリティセンター)】
セキュリティー問題、政府レベルでも協調へ――「情報社会に関する日独シンポジウム」から

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 今年は「日本におけるドイツ年」である。その一環として9月13日から16日にかけて、ミュンヒナークライス(www.muenchner-kreis.de)及び日独シンポジウム組織委員会の主催により、第11回日独シンポジウム「情報社会におけるセキュリティ」が国際交流館で開催され、産官学の有識者230人以上が参加した。

 情報社会を議論するこのシンポジウムは、1977年に第1回が開催された。以来、日独の有識者、科学技術及び社会経済のリーダーらが情報通信技術、社会、法律に関する意見交換を盛んに行ってきた。毎回タイムリーな話題を取り上げており、前回は移動通信について話し合った。今回はサイバーテロ、DoS攻撃、コンピューターウイルス、プライバシーなど、社会問題として取り上げられることの多い情報セキュリティーをテーマにした。
 
 ブロードバンドは急速に普及し、移動通信はもはや社会に不可欠なものとなった。次に実現するであろうユビキタスネットワーク社会においては、低コストで情報通信サービスを利用できるだけでなく、安全・安心、高品質の通信、RFID(無線ICタグ)や電子決済における個人情報保護、知的財産権保護などの確立が求められている。

 自動車の登場は人の移動に革命的な進歩をもたらしたが、同時に交通事故という負の部分も生まれた。インターネットに代表される、情報のハイウェーでも同様である。パソコンにあふれる迷惑メール、電子タグやセンサーの悪用が引き起こすプライバシー侵害、情報の盗難や改ざんの恐れ、すべての社会経済活動を支えるに至った通信ネットワークの脆弱(ぜいじゃく)性など、解決すべき課題は尽きない。だが、もはや我々は電話だけの時代に戻ることはできない。

 今回のシンポジウムでは 次の5つのセッションに分けられ、50 人の有識者から発表が行われた。

・情報社会脆弱性への対応
・ユビキタスサービスにおけるセキュリティ
・社会へのインパクトと挑戦 ― 日独の電子政府とセキュリティ教育
・認証やアクセスコントロールの新技術
・セキュリティ、プライバシー、安全分野の最新の話題

 今後、様々な課題について政府レベルでも、ベストプラクティス(優れた実践事例)の交換、政策協調が行われることだろう。産業界においても、セキュリティー対策が論じられ、セキュリティービジネスも注目されていくと思われる。学会・研究機関は社会のニーズに応えた研究を行うことになる。今回のシンポジウムで得られた成果は、日独両国だけでなく、多くの関係者の参考となるだろう。

 あわせて、この機会に「電子情報通信学会・通信ソサイエティ」(IEICE-CS、日本)と 「Informationstechnische Gesellschaft within the Verband der Elektrotechnik, Elektronik und Informationstechnik」(VDE-ITG、ドイツ電気・電子・情報学会の情報通信ソサエティー)の2つの団体が日独の長年の友好を背景に提携することになったそうだ。

 今後の両団体の発展を祈るとともに、日独シンポジウムの開催に尽力された辻井重男教授、青山友紀教授、Heinz Thielmann教授ら、関係者の方々に敬意を表したい。

<筆者紹介>関 啓一郎(せき けいいちろう)
総務省 総合通信基盤局 国際部国際経済課長
1983年 東京大学法学部卒、当時の郵政省に入省。 その後、通信政策局政策課課長補佐、事務次官付、国際経済研究所ワシントン事務所長、マルチメデァア振興室長、官房主計課調査官、内閣官房内閣参事官(IT戦略本部担当)を経て、2004年より現職。主な著作は、「米国における放送『やらせ事件』と通信法の改正」、「通信・放送の多様化と制度上の課題」、「情報通信の不適正利用とその対策」、「ネットワークにおける発信者の匿名性について」、「英国の競争政策-インターネット政策を中心に」など。

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