【ネット時評 : 田澤由利(ワイズスタッフ)】
テレワーク普及で地域は活性化するのか?――「テレワーク力」の必要性

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 インターネットが日本に普及しはじめて10年。地方での生活は便利になった。最新のビジネス情報も、東京の有名店のお菓子も、近所の本屋にはない専門書も、ネットで簡単に取り寄せることができる。しかし、地方の人口減少は止まらず、労働力が都市部に集中する構図は変わらない。インターネットのおかけで生活が便利になっても、その「生活」をするためのお金を地方では稼ぎにくいからだ。

 そんな中、「テレワーク」という救世主が現れた。ITを使って地域で仕事ができれば、都会に出ずともお金が稼げる。人口減少に悩む自治体からの期待は大きい。しかし、テレワークが普及すれば、本当に地域は活性化するのだろうか?


テレワーク推進施策の現状

 昨年春、政府が発表した「テレワーク人口倍増アクションプラン」では、「2010年に労働者の2割をテレワーカーにする」という目標をかかげると共に、各省庁に向けて26ものテレワーク施策(重複あり)を実施するよう指示している。「労働力不足対策」「少子化対策」「地域の過疎化対策」「ワークライフバランスの向上」など、テレワークにかかる期待は大きく、平成19年度は、各省庁において、すでに以下のような施策を実施している。

【政府の施策実施状況】

総務省
・テレワーク推進
 http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/telework/index.htm

国土交通省
・平成19年度国土交通省事業 テレワークセンター実証実験
 http://www.t-work.jp/

厚生労働省
・テレワーク相談センター
 http://www.japan-telework.or.jp/center/

また、個人的に企業・地域・政府などのテレワーク情報を発信するブログを公開しているのでご参考いただければと思う。

田澤由利のテレワークブログ
 http://telework.blog123.jp/


地域活性化施策としてのテレワークは遅れ気味

 テレワーク普及に向けた大きな流れの中、松下電器産業、サントリー、NTTデータなど、大企業がテレワーク制度を導入し、テレワークは確実に普及し始めている。テレワークの定義は、「週8時間以上、本来の勤務場所以外で仕事をすること」だ。つまり、企業においては、社員が週1日だけ自宅で仕事をすると、「テレワーカー」になる。テレワーク時の業務管理・時間管理・業務評価をどうするかという問題は残っているが、まずは比較的実施しやすいと言える。

 しかし、「地域の活性化」という視点から見ると、まだ先が見えていないのが現状だ。各地でテレワークの実証実験が行われたり、地域セミナーが開催されたりはしているが、実際に地域にテレワーカーを増やす具体的な施策には至っていない。

 都市圏の企業が「週1日のテレワーク」を導入しても、そこで働く社員は、やはり通勤可能な地域に住み続けなくてはいけない。故郷に帰るためにテレワークをしたい、という人がいても、現状では実現されないだろう。それどころか、テレワークを導入できる体力があるのは、今のところ大企業が中心だ。放っておくと、「テレワークをしたいので、都会にある大企業に就職しよう」なんて本末転倒な現象も起こりかねない。

 では、地域活性化を目的とする場合、どんなテレワークが考えられるのか。大きく分けて以下の3つのパターンが考えられる。

(1)都市圏企業による、フルタイムの「雇用型テレワーク」
(2)地域企業における、週1回程度の「雇用型テレワーク」
(3)地域のSOHO、個人事業主による「自営型テレワーク」

しかし、(1)はすぐに実現できるものではない。できるだけ早い効果を求めるには、(2)や(3)の推進が望まれる。


8年前のテレワーク施策の失敗に学べ

 2000年前後から、インターネットを使って仕事をするスタイルを普及させるべく、政府を中心に「SOHO・マイクロビジネス支援」が実施された。SOHO・マイクロビジネスは、現在の「テレワーク施策」における、「自営型テレワーカー」に該当する。

 当時の施策の中心は以下のようなものだった。
 
・SOHOワーカーのための施設整備
・SOHOワーカーと企業を結ぶ、マッチングシステム
・発注側企業に対するセミナー等の啓発活動

 ※参考
 情報通信白書平成12年度版
 第3章 第5節 2テレワーク・SOHOの推進 普及支援策の充実
 http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/ja/h12/html/C3520000.htm

 結果、各地域の自治体でテレワークセンター・SOHOセンターといった施設が設置され、セミナーが開催され、ネット上では支援サイトがオープンした。しかし、公的支援や公的発注が終了すると、施設は縮小し、SOHOワーカーは仕事を失い、マッチングサイトも活性化しないまま閉鎖された。

 これらのテレワーク施策が成功しなかった原因は、「企業は、テレワーカーに仕事を発注したくない」という現実から目を背け、後方支援的な施策のみを実施したからだと私は考える。

 企業が、業務のアウトソーシング先に望むのは、「低コスト」「低リスク」「高品質」なパートナーだ。個人単位、あるいは小規模グループで仕事をしているテレワーカーには、「低コスト」しか武器がない。つまり、「企業がテレワーカーに仕事を発注する理由が無い」のだ。この状態で、「発注ありき」のマッチングサイトや施設などを作っても、効果は出ないのは、当然といえば当然である。

 今後の施策においてすべきことは、自営型テレワーカーでも、「低リスク」かつ「高品質」の仕事をできるよう支援することだと私は思う。
 

「テレワーク力」の必要性

 では、テレワークでも、「低リスク」かつ「高品質」の仕事をするには、どうすればいいか。その答えを説明するために、私は、「テレワーク力」(てれわーくりょく)という、言葉を使うことにした。「テレワーク力」とは、テレワークの価値や魅力を高めるための「力」である。以下の「組織力」「信用力」「個人能力」の3つをバランスよく強化することで、テレワーカーが「低コスト」「低リスク」「高品質」の仕事ができるようになると、私は考えている。
 
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テレワーク力

 実は、この「テレワーク力」の話をしたときに、ある大手企業の方から「これはテレワークに限らず、一般の企業でも必要なことでは?」という指摘をいただいた。まさにその通りだ。本来なら、あえて言葉を作ってまで、語る話ではない。しかし、その当たり前のことが、「インターネットで仕事をする」という概念が入るだけで、できていないのが現実なのである。

 テレワークをするということは、「時間的」「体力的」には、通勤するよりも楽だ。しかし、逆に、通勤しているのと同等の仕事をするには、「精神的」にも「同僚とのコミュニケーション」を保つ上でも、より大変になる。一般企業以上に、「組織力」「信用力」「個人能力」、つまり「テレワーク力」が求められるのだ。

 そして、「テレワーク力」を高めた上で、その地域の特色に合わせて、「郊外型」「広域型」などの独自のテレワーク展開を進めるべきだと考える。


「テレワーク力」高める支援とは

 「雇用型テレワーク」においては、企業自体が「組織力」「信用力」を持ち、「個人能力」を持つ人を採用している。しかし、「自営型テレワーカー」は、違う。「組織力」をもともと持っていない。「信用力」を得るには、機器や認定などの費用がかかる。「個人能力」を高める方法がわからない。そして、それは、地方になればなるほど、その傾向が強くなっている。

 この視点で、今の政府の施策を見てみる。
 
 ・情報セキュリティシステムの構築に集中していないか
 ・労務制度やマニュアルの整備だけに集中していないか
 ・施設のための経済的支援に集中していないか
 ・エクセルやワードの使用法など一般的なIT教育に集中していないか

 私としては、「テレワーク力」の育成を意識した、以下のような施策の必要性を強く感じている。
 
 ・「組織力」を高めるツールの開発、マネージャーの育成
 ・「信用力」を高めるための指導および、金銭的支援
 ・「個人能力」を高めるための技術やマインド教育

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テレワーク力を高める施策

 なお、「組織力」を高める手法として、私は「ネットオフィス型テレワーク」を提案している。これについては前回のコラムで触れているのでご参照いただきたい。
「テレワーク導入で、企業の生産性は向上するのか・ネットオフィス型テレワークの提案」

 自営型テレワーカーにおける「ネットオフィス」は、個人のテレワーカーをマネジメントすることで、プロジェクト体制での業務推進を実現する。

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ネットオフィス型テレワーク(自営型の場合)


テレワーク普及で地域は活性化するのか?

 さて、タイトルの疑問に戻りたい。テレワークが普及すれば、地域は活性化するのか?答えは「YES」だ。ただし、ここまでお話してきた理由で、ワーカーや地域・組織としての「テレワーク力」が低いままでは、どんなに後方支援をしても、悪循環から抜けることはできない。

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 しかし、企業や地域における「テレワーク力」が強化されれば、好循環を生み出すことができるはずだ。

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 そして、さらに、夢は広がる。

 地域における「テレワーク力」が高まれば、そこは、都市圏で働くワーカーにとって魅力的な地域になるかもしれない。通常の勤務と同等の仕事ができ、見合った収入を得ることができれば、物価が低く生活しやすい地域で住むことを選択する人も増えるだろう。

 また、ワーカーの「テレワーク力」が強化され、多くの職種・業務で、通常勤務と同等の生産性が可能になれば、企業も、固定コストが低いテレワーク社員の採用を進めるはずだ。さらに、労働力不足時代の中、都市圏の企業が地方にテレワークで働く人材を求めるようになれば、確実に地域の活性化につながることだろう。

<筆者紹介>田澤 由利(たざわ ゆり)
ワイズスタッフ代表取締役
奈良県生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業。シャープ(株)にてコンピュータ関連の技術、企画、販売促進等の業務に従事した後、フリーライターとして独立。以来、3人の娘の出産、夫の5度の転勤による引越しを経つつ、SOHOとして、パソコン関連の書籍や雑誌のライティングをする。98年、SOHOがチームを組んで仕事をする「ネットオフィス」実現に向け、ワイズスタッフを設立。現在では、自社で開発し、2003年1月に発表した『ネット上のプロジェクト運営ツール「Pro.メール」』を活用して、海外を含む全国各地のSOHOスタッフ約100名が50ものプロジェクトを同時に運営している。2005年4月、株式会社ワイズスタッフに組織変更。主な業務内容は、ホームページ制作・メールマガジン編集・マーケティングなど。会社の拠点は、北海道北見市。

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