【月例会】
無線ネットワークのネクストステージ

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無線ネットワークのネクストステージをテーマに開催された月例勉強会の会場

 日経デジタルコアは6月29日、無線ネットワークをテーマに月例勉強会を開催した。WiFi、WiMAX、そしてPHSと、それぞれの通信方式が今度どのような展開を見せるのか、そしてワイヤレス環境の普及に不可欠な、電波の配分問題はどうなるのか。それぞれの分野から専門家を招き、今後の展開を探った。

〔問題提起〕本荘事務所代表 本荘修二氏

 ワイヤレスの新しい技術は多様化しており、何が主流となるか現在はまだ見えていない。長距離通信が可能な「WiMAX(ワイマックス)」の用途がどのくらい拡大するかは未知数だが、単独ではなく現状無線LANの標準規格となっているWiFi(ワイファイ)との併用を考えれば、利用範囲は広いものとなるだろう。携帯電話を、WiFi/WiMAXが代替するという可能性も否定できない。英BTが1台の電話で屋外では携帯電話、家の中では固定ブロードバンドのネットワークを利用して通話できる「BTフュージョン」を始めたように、ネットワークを切り替えて利用できるサービスの需要が今後拡大していくと予想されるからだ。

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本荘事務所代表の本荘氏
 通信会社以外の参入も注目だ。例えば任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」を使った無線ネット接続。WiFiの無償アクセスポイントを年内に1000カ所作る計画で、対象を友人のみに制限するなど、子どもが遊びで利用することを念頭に置いた設計になっている。また、ゲーム内の犬をやりとりできる「すれ違い通信中継所」のサービスを、既に6月21日から60カ所のスポットで始めている。ソニーは韓国でKTと提携し、携帯型ゲーム機PSPで無線ネットに接続し、コンテンツを利用できるサービスを提供している。
 このように、アプリケーションやコンテンツを握っている企業が、インフラが整うのを待たずに自らインフラ部分も含めて事業を推進するようになっている。こうした状況を視野に捉えていくことも重要だ。

〔WiFi〕ライブドア ネットワーク事業本部 板井清司氏

 7月よりライブドアは公衆無線LANサービス「D-cubic」の試験サービスを東京で開始する。電柱にアクセスポイントを設置し、10月の本サービス開始時には山の手線圏内の8割以上をカバーする予定だ。料金は月額で525円と、国内の同種のサービスに比べ割安なものだ。堀江貴文社長の「ワンコインで使えるサービス」へのこだわりもあった。

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ライブドアの板井氏

 採用する規格は、WiFiの802.11bと802.11g。サービスに申し込んでいなくても、無料のライブドアIDを取得すればライブドアのポータルサイトまでは閲覧可能だ。
 日本ではPDAはさほど普及していないが、米国ではPDAと電話が合体したような魅力的な製品も登場している。今後、デジタルカメラや携帯オーディオプレーヤーといった様々なデジタル機器がWiFi化すれば、ユーザー数の拡大が見込める。そのようなPC以外の端末からネットに接続するユーザーをいかに増やしていくかがポイントになるだろう。他の通信方式との関係だが、これは各ユーザーの使い方、住んでいる地域、あるいは家族構成などの属性によって、自然に住み分けが進むのではないかと考えている。積極的なアライアンス展開によって、ユーザーにメリットの高いサービスを提供していきたい。
 D-Cubic自体の利用料は確かに割安だが、利用する場合はまずライブドアのポータルにアクセスするから、ポータルサイトビジネスには大きく貢献する。ポータルビジネスには強力なライバルも多いが、まず屋外利用の分野でナンバーワンを目指したい。

〔WiMAX〕富士通 電子デバイス事業本部 先端商品事業部長 中西富士男氏、中村健一氏

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富士通の中村氏(左)、中西氏

 WiMAXと呼ばれる「802.16」規格の無線ネットワークは、カバー範囲が広いことが特徴。現在はインターネットのバックボーンから家庭までのラストワンマイル、すなわち鉄塔間の通信や鉄塔から各家庭への通信での利用を想定している。
 「16d」は2004年6月に規格が承認され、2005年7月から認証試験を開始する。我々も試験用に、半導体セットのサンプルを提供する。モバイル分野での利用が期待される「16e」の規格についても9月には承認されるだろう。
 2006年以降になれば、新しい半導体技術の開発も進み、PCカードのような機器でWiMAXを使える時代も来るだろう。都市部ではホットスポットでWiMAX、家庭ではWiFi、といった利用形態になるのかもしれない。
 WiMAXの普及に向けた課題としては、消費電力とコスト、周波数の問題などがある。消費電力やコストは、新しい技術の採用や既存ネットワークと整合させる事で下げていけるのではないか。周波数については、各国機関との連携により解決出来ると考えられる。それが、より高品質なモバイルネットワークを低価格でサービスできるかどうかを左右することになる。
 現在開発しているWiMAX用の半導体セットはまだポータブルサイズになっていないが、次世代モデルではより小型化する。携帯端末に入るまで小型化された時点で、利用ニーズがどのぐらい高まっているかがカギといえそうだ。

〔PHS〕ウィルコム 執行役員ネットワーク技術本部長 平澤弘樹氏

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ウィルコムの平澤氏

 我々のPHSサービスは、データ通信の定額利用サービスなどのヒットもあり、300万人のユーザーを維持してきた。また今年5月からは音声通信の定額サービスもスタートし、好評を得ている。
 PHSはカバー範囲を細かいエリア(セル)で区切り、基地局を増やす「マイクロセル方式」だ。実に10年かけて、ほぼ全国をカバーできた。
 PHSは周波数利用効率が高いため、音声定額やデータ定額が実現できる。またトラフィックを分散できるので、安定した速度が出せるというメリットもある。これらはブロードバンド通信においても強みを発揮するだろう。
 PHSを利用したデータ用端末には、消費電力が小さいというメリットもある。製造コストも低いため、様々な機械にモジュールとして組み込むことが可能だ。代表的なのは、各種のメーターにPHSを搭載させ、遠隔地で情報を収集できるようにする「テレメタリング」。この技術を応用していけば、まさにユビキタスと呼ぶにふさわしい世界を形作ることに貢献できるのではないか。
 その文脈で生まれたのが「WILLCOM SIM STYLE」のコンセプトだ。これは端末を無線通信部分とそれ以外に分けて製造するという考え方で、そうすれば無線通信機のノウハウのないメーカーでも端末の製造に参入できるようになるし、無線部分は各端末で共通化されるのでトータルの製造コスト削減にもつながる。そして、無線部分は電話機やカード型通信機、テレメタリングに加え、各種のデジタル機器や自動車、家電、がん具にいたるまで、幅広く装着していくことを想定している。また、それをビジネスとして展開するにあたり欠かせないのが、「機器認証プラットフォーム」とでも言うべき仕組みだ。これは、現在その通信機が何に装着されているのかを把握したり、その範囲を指定したりするもの。これが実現すれば、利用形態に応じバラエティーに富んだ料金体系を用意することができる。

〔電波政策〕総務省 総合通信基盤局電波部電波政策課 炭田寛祈氏

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総務省の炭田氏

 日本の電気通信市場は、移動通信の割合が約6割と大きいのが特徴だ。米国では23%、ドイツやフランスも30%台に留まっている。
 現在、日本でインターネットに接続している携帯電話は約7600万台にも上る。一方で、固定のインターネット接続契約者数はブロードバンドとダイヤルアップを合計しても3500万ほどと推定される。この数字を見ると、モバイルがインターネット入り口として使われている、ということが実感できるのではないか。 今後、ワイヤレスのブロードバンド化を進めていくことは、情報通信審議会の「電波政策ビジョン」の中でも提言されている。携帯電話だけでなく、無線LANの普及にも支障のない電波環境を整備していくことも重要な課題だ。
 ワイヤレスブロードバンド環境を構築するためには、周波数の積極的な開放を重点的、戦略的に進める必要があるという観点から、2003年10月に周波数の再編方針を公表した。今年6月初めに公表した携帯電話向けの周波数新規割り当ても、その方針に基づいたものだ。
 電波の周波数帯では、扱いやすく、直進性が弱いために伝わりやすい低い周波数帯に需要が集中している。特に3ギガヘルツ以下は携帯やPHS、テレビ放送などがあってひっ迫度が高い。もう少し高い3~6ギガヘルツの範囲を「低マイクロ波帯」と名付け、ここで今後1,000メガヘルツを超える大量の周波数を 開放し利用を促進していきたいと考えている。
 これからは、参入について自由度の高い帯域と、ある程度参入枠を設定し品質を保証をする帯域の両方を提供し、その調合の仕方を政策決定で行うようになるだろう。有線と無線のブロードバンド融合でビッグバンが起こし、ユビキタス社会の実現へつなげていきたい。

ディスカッションから

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ディスカッションに臨む(左から)富士通中村氏、富士通中西氏、ウィルコム平澤氏、ライブドア板井氏

 これらの講演を受けて行われたディスカッションでは、それぞれのサービスに対して「トラフィックの集中をどう回避するのか」「ユーザー数を確保するための戦略は」といった技術的、ビジネス的な質問が飛んだ。
 また、モバイルの用途、サービス、アプリケーションが複雑化する今、割り当ての判断をどのようにしていくのか、という質問に、炭田氏は「シンプルだが、極めて難しい質問だ。情報量とモビリティー、その相関関係にも注目していくことになる」と答えた。
 無線LANとPHS、携帯電話といった様々な通信方式のシームレスな接続を望むとの要望もあがった。 司会を務めた日経デジタルコアの坪田知己代表幹事は、「これからの無線ネットワークは、すべてのサービスを1つのキャリアが提供するという構造から、それぞれが自社の強みを生かしたサービスを提供し、ユーザーはそれらの中から自らの判断で必要なものを利用する、という構造になるのではないか。あるいは購買代理店的な会社が現れ、サービスをパッケージにして売る、というモデルも登場してくるかもしれない。いずれにせよ、ユーザーに選択肢が広がるのは良いことだ」と締めくくった。

NIKKEI NET「【リポート】無線ネット、複数方式共存こそがユーザーの利益に――日経デジタルコアが勉強会」
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?i=20050705aa000aa&cp=1

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