【ネット時評 : 碓井聡子(日本ユニシス)】
「自分3D化」で健康増進プロジェクト

usui2.jpg
 
 前回のこのコラムで、全身をスキャンした3D(三次元)データを使ったビジネスの可能性について述べたところ、多くの反響をいただいた。
 

 セカンドライフのようなバーチャルな3次元の中で活用する方法もあるが、やはりリアルな3次元で活用する方が、個人にも企業にも役に立つんじゃないか。そして、何とかこれを広く業界で活用できるようなものにできないか。そう考えた末、先日からあるプロジェクトに参加することにした。異業種企業が協力して、地域住民の健康増進に貢献していこうという「柏カラダすっきりプロジェクト」(プレスリリース)だ。私たちは、このプロジェクトをはじめとして本年数百名に上る個人の体形測定を実施し、「目標とする体形」の3Dデータを作成するなどして、健康づくりのきっかけを提供していく。


自分のカラダ、本当に知ってますか?

 まずは、普通の人に自分のカラダの現実を見てもらうことから始まる。

 「うわ、すごい。」これは自分の体形を3Dスキャンした画像を見せたときに、たびたび聞いた言葉である。調べてみると女性の半数は覚悟をしていても相当ショックを受ける様子。男性はショック半分興味半分。「こんなんなのか……」と自分の背中の画像を食い入るように見つめる顔に何度も出会った。

 お尻のたるみやわき腹のはみ出し、猫背など今まで言葉だけの他人事だったことが、頭の中に自分の映像として叩き込まれる様子。自分は普通?と何となく思っている人のほうがショックが大きいかもしれない。哀愁のある後ろ姿どころではないのだ。

 この自分なりにショッキングな映像の効果は、私を含め3日坊主には抜群だ。なんといっても、飲み会の後にラーメン屋の前を通るときに、冷蔵庫の扉を開けるたびに、駅のエスカレーターと階段を見るたびに、頭の中に自分の3D画像がちらつくのだから。というわけで、ここまでは自分の体を材料にしたリアルな3D化の話。


カラダの未来はどう見える?

 ここからは、少しITを使ってみよう。リアルの3D体形をもとにすれば、自分の体形の「未来」を個人のデータに基づいたシミュレーションで作ることができる。例えばウエストが今より10センチ減った場合の体形や、このままの運動・食事を続けた場合のあと半年、1年後の体形など、自分の未来の姿を見ることができる。

jihyo-usui.jpg

 もちろんいい未来だけでなく、都合の悪い未来も見えてしまいそうだが、個人の心がけ次第で変えられるのが、未来のいいところ。

 何しろ自分の3D体形を見ただけで男女とも7割近くのヒトが運動をしようと思うわけで、ここに確からしい目標イメージがあれば、3日坊主も、もう少し頑張れるかなと思えてくる。


あなたが「すっきり」した姿はコレ!

 さらに言えば、「すっきり見せたい」場合にどういう体形になればよいかというワガママな要求に応えることもできる。現在の自分の体形が他人からどう見えるか、という印象を客観的に評価して数値化し、それとシミュレーションを組み合わせることによって実現可能だ。

 意識調査をすると年齢問わず、男性は女性の目を、女性は男性と女性、両方の目を強く意識するようだ。自分の体形から「すっきり度」の印象を50ポイント上げたい場合に、なりたい体形イメージとそこに至るまでのサイズの増減、太ももや二の腕のクローズアップなどで差異を見せてあげれば、手っ取り早くわかりやすい効果をまず上げたい現代人には効果的かもしれない。


リアルから作るバーチャルなヒト型

 そして多くの男女を測定する中で聞こえてくるのは、「私は平均とくらべてどうなの?」という声。やはりね。スキャン体験者のうち男女とも6割以上が「標準的な体形と比べてみたい」と答えており、何か目安になるものと比べて安心したい、自分のポジションを知りたいという心理がうかがえる。現在のところ、標準体形の3Dにはあまりお目にかかれないが、ある程度の母集団データをもとに40代女性の平均的体形、50代男性の平均的体形などを作り出すことができる。リアルの集合体から作り出したバーチャルなヒト型である。

 そして、これができるということは、年齢、性別、身長、体重といくつかのカラダのサイズがあれば、スキャンをしなくてもある程度その人らしい体形を生成できるということだ。

 このバーチャルなヒト型や、データからの体形生成ができることで、個人だけでなく業界で活用できる幅は大きく広がるのではないかと考えている。


広く業界横断的な使い方で利便を還元

 個人としては、3Dの体形コンテンツを自分のカラダづくりの一環として使うだけでなく、前回のコラムで例示したような自動サイズ測定機能によるファッション関連のサービス、例えばオーダーメードやバーチャルフィッティングにも用途を広げていきたいと思う。

 またファッションだけでなく、生活機器や商品で、自分の体に合ったカスタマイズをしてくれるのであれば、体形データを一定範囲内で自ら提供することもありえるだろう。以前から、体形データは製造・サービスの研究開発分野で広く活用されているが、業界横断的な仕組みの中で生活者の了解のもとに流通させることができれば、もっと個人にとっても企業にとってもその利便性が広がるはずだ。

 いったん3Dデータで表した体形は、様々な側面から統計的・感性的に処理し、切り出し、形を変えて、場面やニーズに応じて効果的な使い方をすることができる。今後も、いくつかの健康保険組合や地域、企業の協力を得て、生活者はもちろん、企業活用の可能性についても確かめていきたい。


<筆者紹介>碓井 聡子(うすい さとこ)
日本ユニシス BIO(ビジネス・イノベーション・オフィス) 戦略推進ユニット シニアマネージャ
1997年から海外ネットビジネスに関する調査・発信を手がける。Webを含むITを活用したビジネスおよびマーケティングの企画立案、戦略設計に従事した経験を生かし、事業企画・立ち上げに従事。Web、IT自体の「性質」を知り尽くし、既存ビジネスに、新規ビジネスに、そして企業自身の競争力強化のためにどこまで使いこなせるかが、生き残りの鍵となると考えている。近年の主な関心事は以下の通り。
■現業(リアル)と2次元・3次元メディアとのシームレスな活用モデル
■少子高齢時代を日本の強みに変える事業
■ヘルスケアでの業界横断、個人資産としてのヘルスケア
■あらゆるモノに情報がつく時代のビジネスモデルと情報のあり方

主な著書:「インターネットビジネス白書2002」、「既存企業VSドットコム企業」(監修)、 「図解B2Beコマース」(共著)


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL
http://www.nikkeidigitalcore.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/277

コメント一覧

メニュー