【世界情報通信サミット】
GIICが年次総会開催

 世界情報通信サミットの特別協力団体である、世界情報基盤委員会フォーラム(略称GIIC:The Global Information Infrastructure Commission Forum)は、3月1日と2日に米国ワシントンで年次総会を開いた。各国から約70人が参加し、インターネットの管理体制(インターネットガバナンス)や、ブロードバンドの浸透状況などについて意見が交換された。また、昨年のインド洋大津波のような自然災害に対し、情報通信を活用してどのような国際協力ができるかについても話が及んだ。

ワシントンで開かれたGIIC年次総会


GIICは1995年の発足。当時の米クリントン政権が提唱した「情報スーパーハイウエー構想」を、米国だけでなく発展途上国も含め世界規模で広めることを目的に民間企業が中心になって結成した。97年に組織の拡充がなされ、米国、アジア、ヨーロッパ・アフリカの3地域に共同議長を置く体制となった。日本からもNEC、東芝、日立製作所、富士通などIT(情報技術)大手をはじめ8社が参加している。


今回の会議ではテーマ別のパネルディスカッションのほか、世界銀行のキャシー・シエラ氏や、米国国務省のデービッド・グロス次官補代理を講師に迎えたゲストスピーチなども行った。会議の最後には今後の運営体制や活動の方向性などについても話し合い、新しい会長に富士通の秋草直之会長が選任された。


インターネットガバナンス、広い視野が必要

講演する在米国日本大使館の谷脇康彦参事官


インターネットガバナンスをテーマにしたセッションには、TCP/IPの開発者であり「インターネットの父」と呼ばれることもあるMCIのビント・サーフ上級副社長、IBMのマイケル・ネルソン副社長、在米日本大使館の谷脇康彦参事官が出席した。司会は富士通の加藤幹之経営執行役が務めた。


冒頭、加藤氏はインターネットガバナンスをめぐる議論には大きく2つの流れがある、と論点を整理した。「1つは、IPアドレスやドメイン名といったインターネットの重要な部分の管理を民間団体が担っていることの是非を問うもの。もう1つは、スパムメールや個人情報の漏えい、有害コンテンツ、あるいはフィッシング詐欺などのサイバー犯罪といった、ネット社会のマイナス面をどう抑えていくかという取り組みだ」。


サーフ氏は、加藤氏が整理したうち、前者の部分に注目が集まりがちな現状に疑問を示した。スピーチ中に1枚の紙を取り出して「もしこの紙に書かれていたことに問題があったとしたら、われわれが考えるのは『誰が、どういう目的で書いたか』だろう。現在のガバナンス議論は、その状況で『どのようなペンや印刷機が使われたのだろう』と考えるようなものだ」と述べ、より広い視野でこの問題に取り組む必要性を強調した。

GIICの共同議長であるブライアン・トンプソン米コムサット・インターナショナル会長、新会長に就任する富士通の秋草直之会長、インターネットガバナンスセッションの司会を務めた富士通の加藤幹之経営執行役


ネルソン氏は、現在のインターネットの管理体制が複雑かつ混乱したものであると指摘した。かつて電話の世界的な管理体制が、国際電気通信連合(ITU)を頂点とした、ピラミッド型の単純かつ安定したものだったことを振り返った上で、現在のインターネットの管理体制は「そのピラミッドがひっくり返ってしまったようなもの」と表現した。さらに現在のインターネットガバナンスは、政府が関与している部分、民間組織が主導している部分、技術標準化団体が担当している部分、そしてそれらが重なり合っている部分などがあり、把握することは非常に困難であると述べた。


谷脇氏は、通信業界の競争軸変化がインターネットガバナンスにも関係してくるのでは、と分析した。「あらゆるデータがインターネット上で流通する“Everything over IP”の時代には、そのデータがテキストなのか音声なのか映像なのか、有線であるか無線であるか、地域内通信であるか長距離通信であるか、といった、これまで通信業界が重んじてきた区分けは無用なものになる」と述べ、これを通信業界の「水平統合」と位置づけた。]


また一方で、1つの会社がインフラの整備からプラットホームの提供、コンテンツの配信まで、すべてを担うこともビジネス戦略上重要になってくる。これが通信業界の「垂直統合」だとした。この水平統合、垂直統合の同時進行は、インターネットを支える企業のビジネスモデルを劇的に変化させることになり、これを無視しては現実的なインターネットガバナンスを論じることは難しいのではないか、と述べ、参加者の注目を集めた。


自然災害対策、ITで各国の連携深める

記念撮影に臨むGIICのコミッショナーら


自然災害に際してITをどのように活用するかを話し合うセッションでは、世界銀行が支援して2000年に設立された「グローバル・ディベロップメント・ラーニングネットワーク(GDNL)」について、同行の吉村幸雄副総裁から紹介があった。GDNLは、世界各地に約70カ所存在する、最先端の情報通信技術の提供施設「ラーニングセンター」を光ファイバーやISDNで結んだもの。センターには高速インターネット回線やテレビ会議システムなどがあり、非営利団体や民間企業によって運営されている。


2003年にSARS(新型肺炎)が猛威をふるったとき、世界銀行ではGDNLを活用してインドネシア、フィリピン、日本などに情報提供した。また今年1月に神戸で開かれた世界災害対策会議では、東京のラーニングセンターがスマトラ沖地震による津波の被害を受けた各国と日本の災害対策担当者がこのネットワークで情報共有を行うことを提案したという。


秋草新会長体制発足、「民間組織」の強み生かし活動

今後の活動方針についての提案を行う日立製作所の桑原洋取締役

会議の最後には、GIICの運営体制や活動の方向性についての話し合いがなされた。「GIICの新しいミッション」と題してプレゼンテーションを行った日立の桑原洋取締役は、今後ITが社会へ及ぼす影響は一層広範囲に及ぶことが予想され、そこで発生する課題の解決にあたっては国家や地域の枠組みを超えて、政府や民間企業、学界、非営利法人など、様々な立場の人々が強固に連携していくことが不可欠であるとの認識を示した。


GIICはこのうち民間の意見を代表する国際的な存在であり、実際に事業展開しているという民間の強みを生かして活動していくべきではないかと提案し、賛同を得た。また、組織体制も刷新し、新たな会長として富士通の秋草会長が選出された。あいさつに立った秋草会長は、今回採択された活動方針に沿って、積極的に盛り立てていこうと意気込みを語った。


GIICのホームページ
http://www.giic.org

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