【ネット時評 : 金 正勲(慶應大学)】
人類発展の基盤はイノベーションにあり 産・学・政でフォーラム発足

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 2月4日、慶應義塾大学SFC研究所主催で「ネットビジネスイノベーション(NBI)政策フォーラム」のキックオフシンポジウムを都内で開催した。シンポジウムには、鈴木寛文部副大臣、内藤正光総務副大臣、近藤洋介経済産業政務官、津村啓介内閣府IT戦略担当政務官など10人を超える政治家や、孫正義ソフトバンク社長、村上憲郎グーグル名誉会長、堂山昌司マイクロソフト副社長など産業界からも多くの方々に参加いただいた。シンポジウムでは、まず民間側から「ネットの創造的活用による日本再生についての民間からの提言」を、政治側から「政策立案者が描く日本のITビジョン」をそれぞれ提示。これを受けたパネル討論では、ネットの創造的活用のための課題の抽出と活動の方向性の設定について議論し、「イノベーションこそが成長のエンジンである」とした声明文を採択した。
 
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議論するパネリストたち
 

政治・企業・大学の「原点」

 NBI政策フォーラムが目指すビジョンは、「政治・企業・大学がそれぞれの役割の原点に戻り、イノベーションを軸とした政策決定のパートナーシップを組むことで経済を発展させ、生活を豊かにする」ことである。

 では、政治・企業・大学にとっての「役割の原点」とは何だろう。私たちは次のように考えてみた。

<政治の原点>
まず政治というのは、本来公共利益を最大化するための立法を行うことが使命である。しかし日本の政治は長年、政策議論や決定を省庁任せにしてきたところがある。「政策を作らない、または作れない政治」、それが戦後日本の政治の姿ではなかろうか。その弊害がここにきて表面化してきている。そこで今求められるのが、立法の主役としての政治の役割を取り戻すことである。そのためには政治家自身の立法能力を高めることや、立法を支援する体制(例えば米国の連邦議会調査局や独立系政策シンクタンクのような)を構築することが必要である。

<企業の原点>
次に企業というのは、本来優れた製品やサービスを社会に提供し、その価値を認めた消費者から代価をもらい、その結果として利益を生む主体であるはずである。しかし、今日の多くの企業は、金融危機に象徴されるように営利を追求しすぎるあまり、本来担うべき社会的責任をおろそかにし、結果として社会に対し様々な副作用を生んでいる。最近ビジネスイノベーションと対立する概念としてソーシャルイノベーションが注目されているが、本来ビジネスというのは社会貢献を伴うはずである。両者が対立概念ではなく、類似概念としてイコールになるように事業者は努めることがいま求められている。

<大学の原点>
最後に大学であるが、政策分野に限って言えば、今の大学は省庁主導の審議会に取り込まれ、独立した声を持っていない。日本の大学には、大学という象牙の塔に閉じこもって、ときには時代遅れの幻想に近い権威を頼りに、社会の問題に対し目を背け、行動を起こそうとしない学者が多すぎる。大学人は大学に引きこもることをやめて、社会への使命感や責任感を行動を通じて示していく、そういう実践的な学問を目指すべきである。

こうした、ある意味ゆがんだ現行の政治・企業・大学が、それぞれ本来の役割の原点に戻り、イノベーションを軸とした政策決定のパートナーシップを組むことで、国民主体の政策決定を創り上げていかなくてはならない。その基盤、プラットフォームとして設立されたのが本フォーラムである。


イノベーションで活力ある日本を

 このフォーラムが、活動の基軸を「イノベーションの推進」に置いたのはこういう理由からだ。人類が長年発展し繁栄し続けてきたのは、資源の量が増えたからではない。限られた資源を有効に活用し、そこから新しい価値を生み出し続けてきたからである。その価値創造を可能にするものがイノベーションだ。特に、激化するグローバル競争の中で少子高齢化を迎えている日本は、イノベーションを通じて一人一人の生産性を高めていかなければ、今まで築いてきた国際競争力を維持・拡大していくことは出来ない。イノベーションを基軸とした活力ある国家像をデザインし、その実現のための政策のあり方を議論し、デザインする場として本政策フォーラムは生まれた。今後は主要な政策問題ごとにタスクフォースを立ち上げ、具体的で実効性のある政策を皆さんと共に作っていきたい。


<筆者紹介>金 正勲(Junghoon Kim)慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授
韓国生まれ。米国インディアナ大学テレコミュニケーション学部アソシエイトインストラクター、英国オックスフォード大学知的財産研究センター訪問研究員、独逸連邦防衛大学訪問研究員、知的財産研究所外国人招聘研究員、欧州連合(EU)技術標準化戦略専門家パートナー、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構准教授を経て2009年4月から現職。文化審議会著作権分科会委員、総務省国際郵政行政懇談会委員、総務省電波利用将来像検討委員会委員、総務省ICTビジョン懇談会コンテンツ流通促進SWG委員、経済産業省情報大航海プロジェクト著作権検討ワーキンググループ&著作権制度提言検討タスクフォース委員。BSフジPRIME NEWSブレインキャスター。情報通信学会理事、コンテンツ学会事務局長。


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