【ネット時評 : 藤元健太郎(D4DR)】
可視化できるようになった口コミ――ブログのキーワード分析から

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 ブログの利用が拡大を続けている。書き込んでいる人たちはまだ一般とは言えないかもしれないが、ヤフーやグーグルでブログの書き込み情報が上位に表示されていることもあり、すでにインターネット利用者の半数以上の人は何かしらブログのコンテンツを目にしている状況が生まれつつある。

 ブログは掲示板やチャットなどと異なり、自分が思ったこと・感じたことを独白するパーソナルメディアである。そこで書かれていることは基本的に記入者自らの素直な心象だが(一部にはアフリエイト収入を稼ぐ目的で売るためのテクニックに走ったり、頼まれて書いている人も存在している)、これがデジタル情報として、ネットワーク上に存在していることが大きな意味を持つ。それらをITで大量に収集・分析してマクロ的に捉えてみると、従来のアンケートなどのリサーチと異なる情報を得ることができる。さながら都市上空から巨大な集音マイクで人々の声を拾い集めるように、街中にあふれる友人達とのおしゃべりのような会話がデジタル情報となって現れるのだ。

 そのための技術として、ブログ専門の検索エンジンが多数登場し始めている。ライブドアやgoo、楽天などブログサービスを提供している大手ポータルも軒並みサービスを開始しているが、これらは自社サイトのブログ利用を広めることに主眼を置いている。一方、検索エンジンだけでビジネスをしようとする動きも活発であり、海外ではBlogPulse(http://www.blogpulse.com/)、国内でもテクノラティ(http://www.technorati.jp/home.html)などのサービスが、今何がブログ上で話題なのか?といった情報をランキング形式で提供している。またblogWatcher(http://blogwatcher.pi.titech.ac.jp/)は、あるキーワードがブログ上でポジティブに語られているのかネガティブなのかを測定したり、バースト度(急速に話題になったキーワード)を測定する技術などを研究し、サービス化している。

 口コミの影響力は長年言われてきたことであるが、計測が難しく「影響があるだろう」と言われるに過ぎなかった。しかしデジタルコミュニケーションの発達により確実に捕捉可能なものになりつつある。

 現在、われわれは商品の購入に際して、企業が提供する情報と口コミとしての利用者の感想や噂などの両方を入手し、比較できるようになっている。実際に購買の意志決定において多くの消費者が両方の情報を活用しているという調査結果もあり、すでに化粧品分野において「@cosme」、家電製品において「カカクコム」は絶大な影響力を持つと言われている。
 
ブログに現れる広告効果
 
 そこで筆者は、ブログ上で実際にいくつかの商品分野について分析をしてみた(分析手法等については以下を参照:http://www.d4dr.jp/service/06-1.html)。

 対象は今年の春に発売された緑茶飲料である。ブログ上に出現したエントリー数をBEP(ブログエントリーポイント)とすると、「上海冷茶」(キリンビバレッジ)はCMのタレントの話題についてのBEPが大きいことがわかる。一方の「若武者」(アサヒ飲料)は商品そのものよりも緑茶戦争について語られるている話題の中で登場する傾向が強く、さらにある一週間だけのBEPが大きく,その後はあまり出現していないことがわかる。
 
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 こうした違いは、商品そのものの魅力だけでなく、広告、プロモーションの仕方による違いを反映した結果でもある。今後はこのようにインターネット上の口コミにどれくらい影響を与えるがひとつの広告効果の測定方法になることも予想される。

POSシェアと相似形の口コミシェア

 また激烈なシェア争いをしているデジカメの分野でブログのエントリーでシェアを比べると、実際のシェアと近いシェアが見て取れ、さらにブログ上のシェアはPOSの販売シェアの変化を予想させる兆候も感じ取れる。
 
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ネット口コミが示す可能性

 このように口コミが可視化できるようになると、これまでのようにフローで消えるプロモーションとは異なる、インターネット上にブランドのポジティブな情報のストックを残すようなことがこれからの宣伝戦略として非常に重要になってくる。また、戦略的に口コミをネット上にどう出現させていくかも考えていかなくてはならない。

 長い時間をかけて築いたブランド力は一定の力を持つが、定番商品や企業ブランドといったものはそう簡単に作れるものではない。多くの企業は、大量の新製品の中から1000にひとつぐらいでも定番商品が生まれればいいと願いつつ、たちまち消えていく短い製品のライフサイクルの中でもがいているのが現状である。

 しかし、インターネット上の口コミはこうした現状に新しい可能性を与える。マス媒体への宣伝費の投入とコンビニの棚割を確保するところに力を入れていたマーケティングから、自社商品の本当に伝えたい思いや、開発者の理念、新しい利用シーンの発見などをネットを通じ伝播させるという行動へと変化していけば、製品のライフサイクルを長くすることにも貢献できる可能性が見えてくるのではないだろうか。

 今後は「シェア」を議論するとき、販売シェアをだけではなく、ネット上の口コミ量のシェアをどう高めていくかも重要になると思われる。まだまだ統計的には未知の部分が多い世界ではあるが、いわば「デジタル化された口コミ」は、企業の商品開発や広告宣伝の世界を変革させていくことは間違いないと予感している。
  

<筆者紹介>藤元 健太郎(ふじもと けんたろう)
D4DR社長
1993年からサイバービジネスの調査研究、コンサルティングに従事、日本初のビジネス実験モール「サイバービジネスパーク」のトータルプロデュースを行う。99年5月、8年間在籍した野村総合研究所を離れSIPSを手がけるフロントライン・ドット・ジェーピーの代表に就任。2002年にD4DRを設立し,広くITによる社会システムや,ライフスタイル,企業戦略の変革のコンサルティングや調査研究,プロデュースを行っている。デジタルコンテンツグランプリなど各種審査委員も兼ねる。

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