【月例会】
ITSの現状と将来展望

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今年3月に開催した「世界情報通信サミット2005」では、「デジタル@ホーム」のテーマのもと、家庭のデジタル化について議論を繰り広げた。しかし生活空間全体を考えると、家と並んで重要な場となりつつあるのが自動車である。5月の月例会では、クルマのIT化に焦点を当て、「自動車ITS革命!」の著者であり、通信・ITSジャーナリストとして活躍する神尾寿氏(写真)と、デジタルコアメンバーであるトヨタIT開発センターの吉岡顕氏からレクチャーを受けた。(5月27日、東京国際フォーラム)

神尾氏の講演から

日本のITSは、コンシューマ向けITSビジネスの開発が先行している、世界的にも希有な市場だ。欧米ではITSを安全装置としてとらえる傾向が強く、商用車中心の市場となっている。
だが、その商用テレマティクスはわが国において、物流ビジネスの高付加価値化に貢献するのではないかと期待している。たとえばコンビニエンスストアでは、一日に5~6回も物品が届くなど、配送のタイミングが細分化している。テレマティクスと無線ICタグ(RFID)を活用すれば、トラック内の物品を在庫として認識し、その配送を指示する、ということも可能になるのではないか。私はこれを「浮動在庫」と呼んでいる。
地方の商業施設では、住民の高齢化で客足が遠のくのではないか、という懸念から、配達販売の強化に乗り出しているところも多い。この「浮動在庫」の発想で物流を管理すれば、注文を受けてその日のうちに配達する、というサービスも実現しやすくなる。これが商用テレマティクス発展のカギになるかもしれない。
ITSに求められるものは、安全だったり、情報だったり、サービスだったりと実に多岐にわたる。それに伴い、自動車の持つ価値も多様化していくことになる。いっぽう、自動車や私たちを取り巻く産業構造や社会もダイナミックに変化している。こうした多様化や変化に柔軟に対応していくために、コンテンツやアプリケーションを連携させ、つなぐ技術が今後重要なポイントとなっていくだろう。

吉岡氏の講演から

現状、ITSはインターネットプロトコルを利用するところまではきたものの、クローズしたサービスに留まっているところが問題点だと思う。これをオープンにしていくためには、標準化の取り組みが不可欠だ。
ISOで議論している「CALM」と呼ばれるアーキテクチャでは、ITSサービスとインターネットサービスの両方をサポートし、シームレスな通信環境を実現することをキーコンセプトとしている。
日本では、2001年度からインターネットITSプロジェクトが始まった。このプロジェクトはその後、協議会へと発展し、2005年1月現在では幹事会社13社を含む110社が加盟し、実証実験などを行っている。
社会がユビキタスな環境を求めているならば、当然それは自動車の中にも必要だ。自動車に予め搭載されている機器はもちろん、ユーザーが持ち込む機器も含めて、インターネットに接続できる環境が実現されなければならないだろう。さまざまなアプリケーション間で安定した接続を確保できるようにする取り組みも必要だ。

ディスカッションから

ディスカッションでは、カーナビが今後さらにどのような方向性に発展していくかについて、多くの質問がなされた。
神尾氏は、「運転者以外の同乗者に向けたサービスについて試行錯誤が続いているが、音楽サービスなど、AV機器と融合したサービスが中心になるのではないか。地上波デジタル放送など、映像放送も考えられるだろう」と答えた。「自動車も居住空間として考えると、ヘルスケア分野との融合は考えられないのか」との会場からの質問に、吉岡氏は「ヘルスケアはITSが他分野との融合を実現する、最初の分野となるかもしれないと考えている。実際、心臓麻痺などドライバーが運転できない状態に陥り、事故が起きることを防ぐために、生体情報をモニタリングして、自動車を止めたらどうかなどのディスカッションもされている」と答えた。神尾氏も「大型商用車が原因となる飲酒運転事故が相次ぎ、社会問題化すれば、アルコールモニタリングをパスしないと運転できないシステムの搭載義務づけが必要になる可能性がある。居眠り警告装置なども商用車の事故抑止の視点で、標準搭載化・義務化の議論が始まると考えている」と述べた。
携帯電話のGPS機能との融合により、歩行者の安全性を守るための仕組みも考えられるとの発言もあり、クルマ以外の要素までを考えたビジネスモデルの広がりを模索する議論となった。

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