【月例会】
「モバイルビジネスの潮流を読む」をテーマに月例勉強会を開催

会場の様子
会場の様子
 7月13日(木)、日経デジタルコアは、国内におけるモバイルビジネスの動向を考える勉強会を開催した。
 モバイル関連ビジネスを幅広く取材しているジャーナリストの神尾寿氏、MVNO事業を支援するMVNE事業を展開するモバイル・ブレークスルーの木下眞希取締役、ネット視聴率調査を手がけるビデオリサーチ インタラクティブの荻野欣之社長、そしてデジタルコアメンバーから、イプシ・マーケティング研究所の野原佐和子社長と、4人の専門家を講師として招いた。

神尾氏の講演から

神尾寿氏
神尾寿氏
 携帯電話業界では、各社のビジネスモデルに少しずつ違いが出始めてきた。NTTドコモの「iモード」では、ドコモ自体はインフラと情報サービスの枠組みだけを提供し、コンテンツについては各情報提供者が自由に競争しながらサービスを行っている。一方でKDDIはコンテンツサービスについても、EZナビウォーク、EZ Music、EZチャンネルなど、自社ブランドのサービスを積極的に展開している。そこには、ドコモのビジネスモデルがパケット従量制を前提としているのに対し、KDDIのほうはパケット定額制を前提にしている、という違いがある。
 今後のモバイルビジネスの新たな柱になると見ているのが「おサイフケータイ」だ。NTTドコモはケータイクレジットサービス「DCMX」も開始し、コンテンツビジネスを維持しながら新しい収益を生むビジネスモデルへ成長させようとしている。今後、おサイフケータイはリアルとネットとの橋渡しとして、ますます発展するだろう。こうしたサービスは首都圏が中心、と思われがちだが、地方でもスーパーや交通機関、マンションなどさまざまなシーンで利用が進んでいる。新しい社会インフラとして定着する可能性は十分にある。
 今後の動きとして、PDA的な機能を持つ「スマートフォン」に注目している。その特長は高度で汎用的なメッセージング機能や、Webへのシームレスなアクセス、PCとの容易な接続、フルキーボードなどだ。Googleやマイクロソフトも積極的な動きを見せており、海外ではスマートフォンを軸にネットとリアルが融合しつつある。日本でも、新規参入したキャリアなどが、ここに手を伸ばしてくるのではないか。

木下氏の講演から

木下眞希氏
木下眞希氏
 世界的に、既存の携帯電話事業者の回線を借りて通信サービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)への関心は高い。米ヤンキーグループの調査では、2010年時点で世界のMVNOユーザーは1億を越えると分析している。欧米ではすでに高級ブランド携帯やキッズ向け携帯、スポーツコンテンツを前面に出した携帯など、特定のユーザーにとって使い勝手のいい携帯電話が登場し、成功を収めている。その背景には、欧米の携帯が日本のものほど使いやすい、きめ細やかなものではない、という現実もある。欧米はMVNOによってやっと日本のサービスに追いついた、と見ることもできるかもしれない。
 国内でも、いくつかMVNOの事例が出始めている。ケーブルテレビ大手のジュピターテレコムがウィルコムの携帯電話サービスを自社ブランドで提供している「J:COM MOBILE」や、ウィルコムのPHS網と無線LANのスポットを切り替えて利用できる日本通信のデータ通信カード「bモバイル」など。トヨタでは、KDDIの携帯電話網を利用した車輌内蔵型専用端末「G-book alpha」をリリースした。車両の位置情報収集を使った情報サービスやコンテンツ販売などを実現している。
 日本におけるMVNOの普及には、端末のテスト費用がかさむことや、販売方法、保守の問題など、まだ課題も多い。キャリアとの差別化を図る一方で、ユーザーの奪い合いや回線の飽和を招かないよう、キャリアとお互いWIN-WINの関係を築いていくことが大切だ。

荻野氏の講演から

荻野欣之氏
荻野欣之氏
 生活者にとって、ケータイインターネットというこれまでなかったものが登場したことのインパクトは大きい。2006年1月に行った携帯電話利用調査では、前年に比べデイタイム(9:00~18:00)の利用が増加していた。通勤・通学時、昼休み時、退社・帰宅時など、生活におけるいくつかのポイントでインターネット利用が顕著になっている。
 マーケティング用語で「リーセンシー効果」という言葉がある。一般的に購買の直前に接触した広告が強い影響力を持つという意味で使われているが、現在のインターネット利用時間は「買い物」の時間に合致しており、そうした効果を携帯電話が発揮できるのではないか。
 1月の調査で、携帯でのテレビ視聴意向は44.7%と非常に強かった。だが、ワンセグ放送はそれを単体のメディアとして力を持つもの、と考えるにはまだ時期尚早だ。携帯電話は非常に高機能化され、肌身離さず持ち歩くコミュニケーションのハブになりつつある。そこに開かれたひとつの窓、としてとらえるべきで、他のメディアとの連携の中に位置づけるのが妥当だろう。ワンセグ視聴から既存のテレビにつなげる、ワンセグからリンク先のサイトを見せるなど、様々なルートが考えられるが、どれが利用者が最もアクションを起こしやすい導線になるのかはまだ未知数だ。

野原氏の講演から

野原佐和子氏
野原佐和子氏
 今年6月、当社で行った「携帯電話の利用に関する調査」では、NTTドコモユーザーが約半数だったが、10代ではauユーザーがドコモを上回った。3G携帯ユーザーは、前回調査(05年1月)の16%から48%へと大きく増加。パケット定額料金の利用も急激に伸びている。携帯電話の各機能の利用割合は、メール5割、通話3割、Web閲覧1.5割、その他の機能が1割未満といったところだが、3G携帯の利用者はWEB利用時間が長い。
 モバイルSuicaの利用実態を見ると、対応機種を持っていると答えた人は全体の7%いたが、その中で実際に利用しているのは2割弱だった。初期設定の煩雑さへの不満が多い。  またワンセグ対応機種の保有者は2.6%おり、そのうち実際に視聴した人は6割いた。今後のワンセグ視聴意向は52.5%と高い。視聴時に求める機能は「番組表からの検索」が最も多かった。
 全体として、現状はおサイフケータイやテレビ電話などよりも、ワンセグや音楽に関する機能が求められていることが分かった。利用者の声に耳を傾け、その機能をしっかりと提供した上で、それからおサイフケータイ等の機能を強化することがポイントだろう。

ディスカッションから

 ディスカッションでは、携帯電話業界の構造が通信サービスからコンテンツ配信までを1社が手がける「垂直統合型」になるのか、各サービスごとに分かれて展開する「水平統合型」になるのか、ということが話題になった。これについて木下氏は、「ネットの面から考えれば、それはクローズドなものか、オープンなものか、という違いになる。iモードはクローズドなものだが利便性は高く、一概にどちらがいいとは言えない。つまるところ、文化の多様性が今後を占うカギになるのではないか」と分析した。

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