【緊急コメント : P2P米最高裁判決】
技術中立性を貫いた米最高裁――ソニー判決そのものは覆さず

成蹊大学教授(米国弁護士)城所 岩生氏

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 4月13日付、NIKKEI NET「ネット時評」に「原審差し戻しか?― P2Pソフト著作権侵害訴訟、米最高裁での口頭弁論を傍聴して」を寄稿した。その最高裁判決が下った。ソフト配布者の著作権侵害責任を認める予想外に踏み込んだ判決だった。9判事全員一致の結論だったのも、今回見直しを迫られた21年前のソニー・ベータマックス判決が5対4のきわどい判決だっただけに意外だった。法の番人の頂点に立つ最高裁判事達にとって違法ファイル交換のまん延は容認できないということで、踏み込んだ判決になったのかもしれない。

 判決の結論部分を以下に抄訳する。

 「著作権を侵害する使用を助長する目的で機器・技術(デバイス)を配布する者は、それが合法的に使用される製品であるか否かにかかわらず、第三者による著作権侵害行為の責任を負う。」

 21年前に僅差で涙をのんだエンターテインメント業界は当然大喜びだが、負けたハイテク業界は今後の開発に不透明性が増してブレーキがかかることを懸念している。口頭弁論で判事達も原告の弁護士に「iPod も開発できなくなってしまうのではないか?」と質問していたが、そうした懸念である。しかし、ハイテク業界にとって不幸中の幸いは、最高裁が下級審判決は覆したが、ソニー判決を覆したのではない点だ。下級審がソニー判決の解釈を誤ったとしただけなのである。以下、判決のその部分を抄訳する。

 「ソニー判決は、合法的使用が十分可能な製品を開発・配布した者が、現実には著作権侵害に使用されることを知っていたとしても、彼らに著作権侵害責任を課すことを禁じた。第9高裁はソニー判決を広義に解釈し、合法的使用が十分可能な製品であれば、製品の開発・配布とは別に実際に侵害使用を引き起こす意図が証明できるような場合でも、特定の侵害行為を知っていてそれを放置したのでないかぎり、生産者は侵害責任を問われないとした。この解釈は誤っている。・・・・・したがって、われわれは原告の要求するソニー判決の見直しは行わない。」

 つまり、最高裁は著作権侵害を助長するような行為を罰しただけで、P2P技術そのものを罰したわけではない。技術中立性は貫いたのである。

<城所氏プロフィール>東京大学法学部卒、ニューヨーク大経営学修士・法学修士。1965 年NTT入社、1986年から米国現地法人の幹部を歴任した後、1994年退社。米国弁護士、国際大学グローバル・コミュニケーションズ・センター客員教授を経て、2004年から現職。専門は情報通信法、アメリカ法。著書:「米国通信戦争」(1996年、日刊工業新聞社)、「米国通信改革法解説」(2001年、木鐸社)

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