【月例会】
「エリオット・マクスウェル元米国商務長官特別顧問を迎えて」

会場の様子
会場の様子

 1月25日、エリオット・マクスウェル元米国商務長官特別顧問を講師に迎え、勉強会を開催した。マクスウェル氏は、クリントン政権下でEコマースに関する法的整備やブロードバンドの普及などに腕をふるったことで知られている。
 今回は「オープン性」をキーワードに、ネット社会の新たな価値創造プロセスについて日米の事例を交えて考察した。続くディスカッションでは、知的財産権や政策などの視点もふまえて議論が交わされた。

 エリオット・マクスウェル氏の講演から

 現在では、情報をより速く、低コストで配信できるようになった一方で、企業は情報の価値を高めるためにアクセスを制限し、囲い込んで情報をコントロールしようという「デジタル・ジレンマ」が起きている。従来は、企業は情報や知財を囲い込むことに価値を見いだしてきた。アップルの「iPod+iTunes」のように、優れたクローズドのビジネスモデルもあるが、情報をオープンにすることによって、さらに大きな価値を期待できるのが今日の社会だ。

エリオット・マクスウェル氏
エリオット・マクスウェル氏

 イノベーションのあり方においても、オープン化の波が進んでいる。例えば米プロクター&ギャンブル社(P&G)はかつての独自研究開発路線を方向転換し、社外の研究開発実績を積極的に取り入れるようになった。すでにそこで生まれる発見の半分ほどは、なんらかの形で外部に起因しているとも言われるほどだ。最近では、アイロボット社の掃除ロボット「ルンバ」がソフトウエアをオープンにし、外部からの提案を受けながら開発を進めていることなどがいい例だろう。

 一方、同じロボットで言えばソニーのペット型ロボット「アイボ」は、のユーザーによるプログラムの改ざんを認めなかった。すでにアイボの開発は終了してしまったが、もし彼らの提案を認めていたら、別の結果になっていたかもしれない。もちろん、クローズとオープンのどちらかが絶対ということではなく、そのバランスが大事だ。

 オープン化が導いた成功例として、「ヒトゲノムの解明」も挙げられる。研究結果を開示して、それに対する新たな結果を研究者が提供する。このサイクルが繰り返され、解明にいたった。医療分野では、今後様々な臨床データを統合したデータベースが形成され、患者自身がそれにアクセスして具体的に調べ、より的確な治療を受けることができるようになるだろう。これ自体が1つの大きなマーケットを形成するであろうし、大きな可能性を持っている。

 オープンであるから優れているとは一概には言えないが、オープンであればより創造性が生まれ、より大きな価値が生まれる可能性が高いのではないか。日本には「三人寄れば文殊の知恵」という諺があると聞いた。まさしくその精神で、オープン性について考えて欲しい。

 ディスカッションから

エリオット・マクスウェル氏
エリオット・マクスウェル氏

 会場からイノベーションのオープン化について「アイボの例もそうだが、製品に搭載されたソフトの改ざんを許可し、なんらかの不具合や事故が起きた場合に、法的な製造者責任を追及されるリスクがあるのではないか」との意見が出された。これについてマクスウェル氏は「合法的な方法でソフトが修正されたかどうかは判別できるはずだ。アイデアを採用する際に基準をもうけ、修正したことでフラグを立て、原因を突き止められるようにするのもリスク回避になるだろう」と述べた。

 「国際的な標準化をオープンに議論していこうとしても、自分の権利を主張したい人もいるだろう。反対勢力とどうバランスを取っていくのか」との質問には、「オープンにすることによるメリット、価値を実証することが重要だ。逆にオープンにしない場合の最終結果がどうなるかを判断材料として提示していくべきだろう」と答えた。さらにマックスウェル氏は、それについては国家にも果たすべき役割があると指摘し「政府がオープンスタンダードを好み、推進することも大切。まずは政府が持っている情報を広く一般公開するのだ。その上で、あえて自分の権利を主張する人には立証責任を求めていってはどうか」と提案した。

 

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